日本中医薬学会
第13回学術総会

2023/10/15


「日本中医薬学会学術総会」とは、中医学とこれに関連する領域の研究を促進し、国内外の知識と技術の交流を深め、中医学の発展と普及を目指す学術団体が主催する研究成果や臨床叡智の発信を目的としています。
第13回となる今年は、誠心堂グループ代表の西野裕一が実行委員長を務め、世界で活躍されている医師の講演や交流を深められるような学術総会を開催しました。今後も漢方薬や鍼灸をさらに研鑽して、日本で病気に悩む多くの人に貢献していきます。


開催日:2023/10/14(土)・15(日)

場 所:タワーホール船堀(東京都江戸川区船堀)


日本中医薬学会第13回学術総会


代表の西野裕一は、第13回日本中医薬学会学術総会の座長を務めました。

1.「薬局、薬店の中医学」
2.市民公開講座「ドクターに聞く 漢方薬を上手に利用する方法」

医師や中医師の諸先生方の多岐にわたる研究と臨床発表は、非常に興味深い内容で今後の診療に大いに役立つと思われました。
誠心堂グループからは王全新先生、川崎千尋先生の2名が講演し、有益な研究発表の機会となりました。


<テーマ> 
「漢方食品茶が有効であった頻尿等を訴える妊婦の一例」

<講演者> 
王 全新


<緒言>


晩婚化とともに高齢妊娠も年々増加している中、母体の出産年齢が高齢化し、35歳以上が3割近くにのぼる。 産科合併症は全妊産婦の54.8%に発生するが、その発生頻度は横ばいである。妊婦の健康が話題になる中、誠心堂が30年以上不妊症に尽力した経験と東洋医学の文献『黄帝内経』にあるように「女性は7の倍数の年齢の時に、体調に変わり目が訪れる」や清の中医学婦人科モノグラフ『傅青主女科』にある「女性の生理特徴と病理変化」より考案された臨床処方と生薬の運用の元『千金方』の千金保孕丸から発想を得、高齢妊娠者に安産と産後ケアにより安全な漢方茶を提案したいと思う。

王全新先生講演

王全新先生講演


<方法>


1.『黄帝内経』に女性7の倍数の年齢の時に、体調の変化、生殖と五臓六腑盛衰などを調べる
2.『傅青主女科』に女性生理と深い関係の知識を調べる
3.誠心堂の30年以上にわたる不妊症の臨床をまとめる
4.『千金方』の千金保孕丸からお茶を作る

<結果>


『黄帝内経』:女性は28歳で成熟期を迎え、腎精が充実し、生理と性機能がピークになり、35歳から腎精、気血(脾胃)は衰減をはじめる。『傅青主女科』:女性は妊娠してから脾腎を中心にする。『千金方』の千金保孕丸の組方から胎安茶を作り、妊娠したスタッフが飲んだ結果、1週間で頻尿、特に夜間尿が減り、1週間に夜間尿が2-3回/日あったのが服用3週間目からほぼなくなった。下痢、お腹の冷え、胃の調子もある程度回復した。このお茶は理論と臨床経験よりできたものであるが、症例がまだ少ないので、これから少しずつ集めていく。

<考察>


『黄帝内経』:女性は28歳を超えると腎が衰えはじめ、気血の衰えは35歳から始まる。妊娠すると腎精、気血の提供がさらに必要になり、腎精と気血どちらかが弱くなると胎児や母体に悪影響を与えるのは間違いない。もし親本来の体質が弱い、もしくは高齢妊娠の場合、母子の健康を心配しなければならない。『傅青主女科』の妊娠者用薬原則、『千金方』の千金保孕丸の組方の考え、誠心堂の臨床経験などからできた胎安茶は妊娠した方にある程度効果があると考える。

2023年 第13回中医薬学会 抄録より



<テーマ> 
「不妊相談における中医学の役割と症例」

<講演者> 
川﨑 千尋


<緒言>


近年日本ではライフスタイルの多様化に伴い晩婚・晩産化が年々進んでいる。
女性は35歳以降、卵子の染色体異常の割合が上昇し妊娠率、出産率が低下、流産率が上昇する。以上を背景とし、不妊検査や治療を受ける夫婦やカップルも年々増加傾向にある。
採卵の結果受精卵の獲得に至らない女性が、高度生殖医療と漢方服用、鍼灸治療の併用により胚盤胞の凍結に至り、妊娠、出産した症例を報告する。

川崎千尋先生講演

川﨑千尋先生講演


<症例>


35歳女性。AMH8.39ng/ml、子宮内膜炎、高コレステロール血症、貧血の既往あり。X-1年11月自然妊娠後稽留流産、掻把術。X年10月採卵数4個、受精するも凍結に至らず。体質改善を希望され、X年10月24日初来店。
初潮11歳、30~40日周期、月経期間7日間。30代以降月経周期延長、月経期間短縮、月経前に胸張、頭痛。生理痛、血塊あり。末端冷え性、疲れやすい、腰痛、二便正常、睡眠正常。
舌淡紅。苔薄、裂紋。
血虚血瘀、腎陰虚と弁証し、漢方薬では温経湯、十全大補湯、芎帰調血飲第一加減、牛車腎気丸、亀板膠鹿角膠製剤、糖鎖栄養食品などを使用、鍼灸では着床鍼を行った。

<結果>


X+1年3月20日 採卵 胚盤胞5個凍結
X+1年8月26日 自然妊娠で胎嚢確認、稽留流産
X+1年11月25日 移植 判定陰性
X+1年2月5日 移植 判定陽性
X+2年11月23日 男児出産

<考察・結語>


妊娠または妊娠の継続が困難な症例において、高度生殖医療と弁証論治に基づいた漢方、鍼灸治療の併用が妊孕性の向上に有効である可能性が示唆された。
晩婚化、晩産化が進む現代、生殖医療機関と中医学の連携により妊娠率の向上、流産率の低下が期待できるのではないかと考えられる。

2023年 第13回中医薬学会 抄録より



誠心堂薬局からは3人の学術部の中医師が参加して、世界で活躍されている医師との交流を行いました。漢方薬や鍼灸をさらに研鑽して参ります。

中医師

誠心堂学術部中医師


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