体質で考える「頭痛・片頭痛」

体質で考える「頭痛・片頭痛」

体質で考える「頭痛・片頭痛」

更新日:2023.11.20

 

 

 

頭痛とは?

三大慢性頭痛(緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛)といわれる頭痛は、一次性頭痛に分類されます。頭痛を訴える患者さんのおよそ9割が一次性頭痛で、特に片頭痛は日本人の10人に1人が悩まされているといわれています。二次性頭痛は、くも膜下出血や脳腫瘍など脳自体の問題や、眼疾患、鼻・副鼻腔疾患、高血圧などの全身の病気が原因で起こるものです。

 

頭痛・片頭痛の種類と治療

頭痛が起こるメカニズムはそれぞれ異なるため、頭痛のタイプを把握することは重要です。

緊張型頭痛
毎日頭重感や頭が締め付けられるような感じがする。肩や首がこり、痛みのあるときにマッサージをしたり動くと楽になる。

片頭痛
月に数回ズキズキと脈打つ頭痛が起き、吐き気や嘔吐をともなったり、光や音に敏感になる。痛みは片側が多いが、両側に起こることもある。痛みが起きているときに動く(歩いたり階段を下りたりする)と悪化する。

群発頭痛
年に1~2回、一ヶ月程度連続して起こる頭痛。片側の目の奥が強く痛む。アルコールで誘発される。
最近では、緊張型頭痛と片頭痛の混合タイプが多くみられます。正しく頭痛を分析するために頭痛ダイアリーをつけることが推奨されています。

緊張型頭痛には、鎮痛薬や筋肉の緊張を緩和する筋弛緩薬などが使用されます。片頭痛や群発頭痛には、主にトリプタン系薬剤が使われ、錠剤のほか点鼻薬や自己注射剤などが用いられます。二次性頭痛の場合は、原因となる病気を治療します。

 

漢方で考える頭痛

頭部は、中医学では“諸陽の会(しょようのえ)”と呼ばれ、手足の気など身体全体の陽気が集まってくる場所です。そのため、その流れが妨げられると高頻度で頭痛が見られます。頭痛の原因として中医学では、外からの外邪(人体に悪影響を与える自然環境の変化)によるものと、身体の中に原因(体質素因)があるものに分類します。
外邪とは、風(ふう)・寒(かん)・湿(しつ)・熱(ねつ)などの外界の気候変化のことで、人体に悪影響を及ぼすもののことです。例えば、風寒(ふうかん)の邪気が頭部に影響すると、気血の巡りを滞らせて頭痛が起きます。外邪による頭痛は、風邪(かぜ)の症状の一つであるため、風邪の治癒とともに回復します。一方で体質素因による頭痛は、ストレス、過労、睡眠不足、食生活の乱れなどの原因が複雑に絡み、慢性化しやすい傾向があります。

 

中医学体質別治療法

① 痰湿(たんしつ)体質
身体に余分な水分がたまり、血行が悪くなり痛みが生じる。
随伴症状:身体が重だるい、頭重、耳閉感、むくみ、めまい、食欲不振など。
雨が降ったり天気が悪いと重だるく痛み、温めると一時的に楽になります。

 

漢方

二陳湯、半夏白朮天麻湯など

ツボ

陰陵泉、豊隆など

食材

緑豆などの豆類、冬瓜、とうもろこし、ハトムギなど

 

 

② 血瘀(けつお)体質
血(けつ)の滞りにより、痛みが起きる。
随伴症状:肩こり、唇の色が悪い、シミやくすみが目立つ、冷えのぼせなど。
打撲などの外傷や、ストレスなどにより血(けつ)の巡りが悪くなり、頭痛を引き起こします。痛む場所が一定で刺すような痛みで、女性は生理の期間に生じやすくなります。

 

漢方

血府逐瘀湯、桂枝茯苓丸など

ツボ

膈兪、三陰交など

食材

紅花、シナモン、黒糖、生姜、ネギ、玉ねぎなど

 

 

③ 肝陽(かんよう)体質
身体に必要な陰血(体液や血)が消耗して相対的に頭部の熱が強くなり、痛みが生じる。
随伴症状:ストレスが多い、怒りやすい、肩こり、血圧が高い、不眠、口の苦みなど。
緊張状態が続いたり、強いストレスにより陰血の不足が生じ、自律神経が乱れて血流が滞りやすくなります。元々虚弱体質の人は、ちょっとした情緒刺激で簡単に頭痛を引き起こします。

 

漢方

釣藤散、抑肝散など

ツボ

肝兪、復溜など

食材

しじみ、あさり、春菊、ジャスミン、三つ葉、黒きくらげ、黒豆など

 

 

④ 血虚(けっきょ)体質
体内に栄養を与える血(けつ)が不足して、血流が滞り痛む。
随伴症状:顔色が蒼白、めまい、立ちくらみ、不眠、眼精疲労、動悸、脱毛など。
過労や胃腸虚弱、栄養失調などにより血が不足すると、血管内を巡る物質がなくなるため滞りが生まれやすくなります。我慢できる程度の鈍痛で、疲れると悪化します。

 

漢方

当帰芍薬散、四物湯など

ツボ

足三里、三陰交など

食材

人参、ほうれん草、なつめ、黒ごま、クコの実、プルーンなど

 

 

⑤ 腎虚(じんきょ)体質
加齢や虚弱体質により、血流が滞り頭痛が起きる。
随伴症状:足腰がだるい、物忘れ、耳鳴り、頻尿、白髪、難聴、精力減退、むくみなど。
加齢などにより腎の働きが弱ってくると、脳が衰えることで頭部が空虚となり、頭痛を引き起こしやすくなります。また、老化だけでなく、体質虚弱の人が無理をすると腎を傷めます。

 

漢方

六味地黄丸、牛車腎気丸など

ツボ

腎兪、太渓、関元 ※冷えを伴う場合は、命門にお灸を加える

食材

黒豆、黒きくらげ、黒ごま、山芋、卵、くるみ、アーモンドなど

 

 

 

頭痛・片頭痛の鍼灸治療

頭部は精神活動に関与する重要な中枢であり、そのため経絡(気や血の通り道)が複雑に交差する場所でもあります。痛みは気血の流れが妨げられるときや気血の不足により十分に栄養されないときに生じるため、局所の治療とともに、頭部を巡っている経絡を利用して、気血の流れを調整することで痛みの緩和をはかります。

頭痛で使う代表的なツボ
前頭部の痛み
・印堂(いんどう)
・合谷(ごうこく)
・内庭(ないてい)
など。

側頭部の痛み
・太陽(たいよう)
・風池(ふうち)
・外関(がいかん)
・足臨泣(あしりんきゅう)
など。

後頭部の痛み
・天柱(てんちゅう)
・後渓(こうけい)
・申脈(しんみゃく)
・崑崙(こんろん)
など。

頭頂部の痛み
・百会(ひゃくえ)
・太衝(たいしょう)
・太渓(たいけい)
など。

痛みの場所がはっきりしない全体の痛み
・百会(ひゃくえ)
・合谷(ごうこく)
・風池(ふうち)
・外関(がいかん)
など。

 

暮らしのアドバイス

・湯船につかって血行をよくしましょう
・ストレッチなどで筋肉の緊張をほぐしましょう
・規則正しい生活をして自律神経の働きを整えましょう
・片頭痛がある人は、オリーブオイル、チーズ、赤ワイン、ハム、サラミ、チョコレートなどを控えましょう

 

大谷孝枝

監修 大谷孝枝

薬剤師・鍼灸師・国際中医専門員・中医薬膳師

中国漢方普及協会 学術委員

株式会社 誠心堂薬局 営業部課長


北里大学薬学部薬科卒

東京医療福祉専門学校鍼灸科卒