体質で考える「ED(勃起不全、勃起障害)」

体質で考える「ED(勃起不全、勃起障害)」

体質で考える「ED(勃起不全、勃起障害)」

更新日:2023.11.16

 

 

 

 

ED(勃起不全、勃起障害)とは

ED(勃起不全、勃起障害)とは、Erectile Dysfunctionの略で、性機能障害の1つです。

EDは「満足のいく性行為に十分な勃起を達成できない、もしくは維持できないこと」と定義されています。日本での勃起障害患者数は1000万人以上いると推計されており、約30%の夫婦が勃起障害の経験があると回答しています。このようにEDは、決して珍しいものではありません。また、男性不妊の原因の30%が勃起障害であることも判明しています。

勃起は通常、性的な刺激や興奮が脳から陰茎へと伝わり、陰茎海綿体の動脈が拡張し、そこに十分な血液が流れ込むことで起こる現象です。ところが、神経や血管に何か問題があると、十分な勃起が達成できません。EDの原因は大きく、心因性、器質性、薬剤性、混合性の4つに分けられます。

 

① 心因性

疲労やストレスなどで性的な刺激や興奮が脳から陰茎へ上手く伝えられなくなることで起こります。自慰行為においては勃起が可能でも、パートナーとの性行為となると上手くいかないケースが多くみられます。仕事のプレッシャーや激務、妊活のためのプレッシャー、過去の性行為での失敗によるトラウマなど多くの原因があります。30代から40代でよく見られます。

 

② 器質性

血管の障害により血液が陰茎へ流れにくくなったり、神経の障害により性的興奮が脳から陰茎へ上手く伝えられなくなることで起こります。動脈硬化、高血圧、高脂血症、糖尿病、心臓病、脳血管障害、脳腫瘍、アルツハイマー、脊髄損傷などの病気が原因となりますが、生活習慣病は高い割合でEDとなります。50代から60代でよく見られます。

 

③ 混合性

心因性と器質性の両方が原因となり起こります。EDの原因で最も多いのが混合性です。

 

④ 薬剤性

うつ病の治療薬、薄毛治療薬、降圧剤、前立腺肥大の治療薬、非ステロイド性抗炎症剤などの服用薬による副作用が原因となり起こります。

 

症状

・勃起するまでに時間がかかる

・勃起しても持続ができない

・勃起が全く起こらない

・たまに勃起が起こらない時がある

・勃起しても柔らかい

・性行為に不安がある

・自慰行為は可能だが、パートナーとの性行為が上手くいかない

などの症状が見られます。

 

 

西洋医学的治療方法

心因性、器質性、混合性、薬剤性のどの原因にも、第一選択として内服薬が使用されます。

内服薬には、陰茎の血管を拡張させ勃起を促す、バイアグラ(シルデナフィル)、レビトラジェネリック(バルデナフィル)、シアリス(タダラフィル)などがあります。持病や併用薬により使用が禁忌となる場合があります。通信販売や個人輸入など、自己判断で使用することはやめ、必ず医師に相談の上で服用するようにしましょう。その他には、心理カウンセリング、食事や運動など生活習慣の見直しも効果があります。また、薬剤性の場合は、処方薬の変更や減薬が可能かを主治医に相談してみましょう。

 

漢方で考えるEDの治療方法

中医学ではEDのことを「陰萎いんい」または「陽萎ようい」といい、「」「けつ」「津液しんえき」の流れの停滞、または過不足により引き起こされると考えます。

「気」はエネルギー。身体を温める力、代謝力、免疫力、血液・体液・内臓をあるべき場所に保持したり動かす力のことです。

「血」は血液。全身を栄養して、精神活動を支えるものです。

「津液」は血液以外の体液。身体を潤すものです。

この「気」「血」「津液」のどこに問題があるかを見極め、漢方薬や鍼灸による治療を行います。

 

①気と血の不足体質
<<心脾両虚しんぴりょうきょ>>

 

身体の状態:生まれつきの虚弱体質、胃腸虚弱、働きすぎ・動きすぎなどの身体過労、考えすぎ・心配しすぎなどの精神疲労により、脾と心が衰弱し、気と血が不足している状態です。気と血が不足しており、陰茎に十分な血液を送ることができないためEDが起きています。

治療方法:脾と心の衰弱を改善し、不足している気血を補う「補気補血ほきほけつ健脾けんぴ養心安神ようしんあんじん」の治療を行います。

 

漢方

帰脾湯、加味帰脾湯、茯苓、大棗、当帰など

ツボ

太白・三陰交・中脘など

 

 

気の滞り体質
<<肝鬱気滞かんうつきたい>>

 

身体の状態:精神的緊張やストレス、プレッシャー、食べすぎ、飲みすぎなどにより、肝の機能が失調し、気の巡りが滞っている状態です。気の巡りが滞り、陰茎に十分な血液を送ることができないためEDが起きています。

治療方法:気の巡りをコントロールしている「肝」の働きを正常にし、全身の気の巡りを改善する「疏肝解鬱そかんげうつ」の治療を行います。

 

漢方

逍遥散、柴胡疏肝散、川玉金、川芎、枳実など

ツボ

体衝・内関など

 

 

気の不足体質
<<腎陽虚じんようきょ>>

 

身体の状態:生まれつきの虚弱体質、飲食の偏りや栄養不足、過労、慢性病、老化、性生活の過多、自慰行為の過多などによって、腎が衰弱し、生命エネルギーである気が不足している状態です。性機能や内分泌機能と関わりが深い腎気が不足しEDが起きています。

治療方法:不足している腎の気を補う、「温補腎陽おんぽじんよう」の治療を行います。

 

漢方

八味地黄丸、牛車腎気丸、鹿茸、海馬、肉蓯蓉など

ツボ

関元・腎兪・気海など

 

 

津液と血の滞り体質
<<痰湿瘀阻たんしつおそ>>

 

身体の状態:食生活の乱れ、運動不足、不規則な生活、胃腸機能の低下などにより、余分な水分や老廃物が痰湿として体内にこびりつき、血の巡りが滞っている状態です。体内にこびりついた痰湿により血の巡りが滞り、陰茎に十分な血液を送ることができないためEDが起きています。

治療方法:食生活や生活習慣の改善のアドバイスと共に、余分な水分や老廃物の排出を高め、血の巡りを改善する「化痰徐湿かたんじょしつ活血化瘀かっけつかお」の治療を行います。

 

漢方

二陳湯、温胆湯、血府逐瘀湯、牛膝、丹参など

ツボ

陰陵泉・豊隆・三陰交など

 

生活養生

・睡眠時間は7時間を目安に、早寝早起きを心掛けましょう

・脂質の多い食事、甘いもの、飲酒を控え、緑黄色野菜・海藻・キノコ類・青魚を積極的にとりましょう

・ジョギング、サイクリング、水泳、登山など定期的に有酸素運動を取り入れましょう

・入浴、映画鑑賞、読書、旅行、レジャーなど、自分に適した方法でストレスを発散しましょう

・自慰行為をし過ぎていないか見直してみましょう

・喫煙をされている方は禁煙をしましょう

 

 

EDでお悩みの方へ

漢方薬の服用や鍼灸の治療では、自分の体質をきちんと確認しましょう。同じEDのお悩みの方でもタイプが異なれば、適した治療方法や治療方針が異なります。自分に合った漢方薬や鍼灸治療を選択するために、まずは専門家にしっかり相談しましょう。

実際の漢方相談、鍼灸治療では、チェックにあるような自覚症状だけではなく、舌や脈といった客観的な情報なども考慮して、総合的に体質を確認していきます。体質や治療方針について納得してから治療を始められます。一人で悩まずに、ぜひご相談下さい。

 

 

日本全国よりご相談を頂いております。
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井上桜

監修 井上桜

薬剤師

国際中医師認定A級(現国際中医専門員)

北里大学薬学部製薬学科卒

上原康嗣

監修 上原 康嗣

鍼灸師・誠心堂式三焦調整法認定鍼灸師


琉球大学医学部保健学科卒業

早稲田医療福祉専門学校鍼灸科卒業

早稲田医療専門学校鍼灸科卒業後は整形外科に勤務を経て2005年誠心堂薬局入社

西葛西院長、新浦安店、妙典店院長、行徳接骨院院長を経て、現在は船橋店で院長を務める