妊娠中におこる不眠
~原因や対処法など~

はじめに

頭痛

日本人の5人に1人は不眠の悩みを持ち、20人に1人は睡眠薬を使用しているといわれる現代、睡眠の悩みを抱える方がとても増えています。
そして不眠の悩みは妊婦さんにもみられ、妊婦さんの多くに不眠の症状が認められ、妊娠中は深い睡眠が十分に得られない、といわれています。

睡眠不足が続くと、お母さんの体力は落ちやすくなります。
すると、このようなことにつながりやすくなります。

  • ・日常生活での注意力が散漫となる
  • ・ケガをしやすくなる
  • ・分娩のときに最後まで体力がもたなくなる
  • ・分娩が長引き、赤ちゃんに影響を及ぼす可能性も

妊娠中だけのことだからと思わずに、健康で安全な妊婦生活のためにも妊娠中におこる不眠の原因を知って、適切な対処法に取り組んでいきましょう。




妊娠中に不眠になりやすい原因

妊娠中の時期によって、妊婦さんの体の状態や不眠の原因が異なります。

妊娠初期(0~4か月頃)

妊娠初期

妊娠初期は、ホルモンバランスが変わることにより、女性の体が大きく変化していきます。
特に妊娠を維持するためのホルモン、プロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌されることで、頭痛、吐き気、微熱、ほてりなどといった体調不良が起こり、不眠の原因となります。
また、人によっては強い眠気が襲ってくることもあり、日中に眠気がくることで、夜に眠れなくなることもあります。
さらに精神面でも、妊娠に対する不安や普段とは違うからだの変化に戸惑い、負担やストレスから不眠になりやすくなります。


妊娠初期

妊娠中期(5~7か月頃)

妊娠中期

妊娠中期の不眠の原因として、主にストレスが挙げられます。
強いストレスを感じている場合、自律神経のバランスが乱れてしまい、交感神経から副交感神経への切り替わりがうまくいかないことがあります。
交感神経とは心身を活発に活動させるための神経で、副交感神経とはリラックスして心身を休ませ、内臓を回復させるための神経です。
自律神経の切り替わりがうまくいかないと、夜の時間帯も交感神経が活発に働いてしまい、心身がリラックスできずに、寝つきの悪さにつながります。

他の不眠の原因として、体温変化によるものがあります。体温と睡眠の関係性は深く、人間の体は深部体温(脳や臓器などの体内深部の体温)が下がることで、心身が休憩し、眠気を促す仕組みになっています。
しかし、妊娠中はプロゲステロンという女性ホルモンの作用によって基礎体温があがるため、深部体温が下がりにくくなり、寝つきが悪くなってしまいます。

また、妊娠中期は徐々にお腹が大きくなってくる時期です。体の重心が変わるため、腰を反らすような姿勢をとることが増えます。
しかし、この姿勢は腰まわりの筋肉への負担が大きく、腰痛につながる場合があります。
就寝するときに腰痛が続く場合には、痛みが気になってしまい、なかなか眠れなくなる可能性が高くなります。
さらに、妊娠中は体内の血液量が増えるため、妊娠前に比べ、尿が排出されやすくなります。
夜中でも頻繁にトイレに起きることが増え、寝不足になってしまうケースは少なくありません。

このように、妊娠中期になると、不眠の原因も個人の状態によって様々となります。


妊娠中期

妊娠後期(8~10か月頃)

妊娠後期

出産を目前に控えた妊娠後期では、お腹が大きくなっているため、姿勢が苦しく眠れない方が非常に多くいます。
他にも子宮が大きくなっていることから、膀胱が圧迫されて頻尿となり、ぐっすりと眠れない場合もあります。
胎児が大きくなればなるほど必要とする栄養素も多くなるため、栄養不足による、こむら返りも頻繁に起こりやすくなります。
不眠症に一番悩む時期といえるでしょう。


妊娠後期

妊娠中にできる不眠の対処法

寝る1時間前にお風呂に入る

眠くなるタイミングには、いくつかの条件があります。
そのひとつに、体の内部の温度が下がるときに眠くなるということがあります。
そこで、寝る時間を逆算して、寝る1時間前にお風呂で入浴し体温を上げておくと、ちょうど寝る頃に体内の温度がさがり、眠くなりやすくなります。


日中は妊娠中にできる運動を

日中にマタニティヨガ、ウォーキングなど、妊婦さんが無理なくできる運動をオススメします。
ただし、切迫流産や切迫早産などで安静が必要な方の場合には医師の指示を受けましょう。
もし日中に眠くなりましたら、我慢せずにお昼寝していただいても大丈夫です。
できれば、30分以内としましょう。


寝室に行ったら眠くなるように習慣づける

眠くなってから寝室に行きます。
寝室でテレビやスマホを見たり、仕事をしたりするのは避けるようにします。
30分以上寝られず気になるときは、別室に行って静かに過ごしましょう。


眠る環境を大切に

室温や湿度を適度に調整し、照明を消すか、できるだけ暗くします。
かけ布団は重すぎず、自分にあった枕を使います。
お腹が大きくなってきたら、抱き枕などを活用してもよいでしょう。


カルシウム、鉄、葉酸を多く含む食品を意識して食べる

これらの栄養は、妊娠中に特に不足しがちです。
乳製品や緑黄色野菜、きなこ、豆腐などを積極的に食べることは睡眠にもよいでしょう。


中医学における不眠症とは

中医学における不眠症とは

中医学では心身の働きは五臓六腑ごぞうろっぷが担っていると考えます。
そのうち睡眠では、主に3つの臓腑(心、肝、脾)が関係しています。
何らかの原因でこれらの臓腑の働きがうまくいかないと、体のバランスが崩れ、不眠の症状が現れます。
臓腑に影響を与える原因としては、疲労、傷病、精神的ストレス、生活の乱れ、女性であれば月経など様々です。

漢方では不眠の体質を「虚証きょしょう」と「実証じっしょう 」とに分類して、どの臓腑で過不足が起きているかを考え、適切な漢方薬を選択して改善していきます。

虚証

臓腑に必要な栄養素やエネルギーが不足している状態、気虚、血虚、陰虚など。

実証

臓腑に必要な栄養素やエネルギーに滞りや詰まりがある巡りが悪くなっている状態、気滞、瘀血、痰湿など。


妊娠中に服用する薬には十分な注意が必要です。特に睡眠薬の中には妊娠中に服用してはいけないものもあります。
自分の判断で服用してはいけません。早めにかかりつけ医に相談しましょう。
また、漢方薬やサプリメントにおいても、妊婦さんの服用ではきちんと選ぶ必要があります。妊娠中の漢方薬に詳しい専門家と相談するようにしましょう。


まとめ

まとめ

妊娠中は、ホルモンバランスや体調、身体の変化など、様々な原因で不眠に陥りやすくなります。
そんなときは、上記の対処法をためしたり、体調が良ければ散歩などをして体を動かしたりしてみると良いでしょう。
眠れないために心身に変調をきたすようであれば、治療が必要な場合もあります。
赤ちゃんの健康を守るためにもお母さんの健康は大切です。
不調を我慢せずに、お気軽にご相談くださいね。



更新日:2024-01-16