体質で考える「不育症」

更新日:2023.11.13

 

 

不育症とは?

体質で考える「不育症」

体質で考える「不育症」

不育症とは、妊娠はするものの、非常に残念なことに流産もしくは死産をむかえ子供が得られない状態のことをいいます。

なお、妊娠検査等で妊娠反応が陽性であり、子宮の中に赤ちゃんの袋(胎のう)がまだ確認できていない際の流産は、化学流産(化学妊娠)といわれ、不育症の流産回数には含まれません。

また、流産を2回以上繰り返す場合を“反復流産”、3回以上繰り返す場合を“習慣性流産”とも呼びます。習慣性流産には、妊娠22週以降の死産や生後1週間以内の新生児死亡は含まれないため、不育症の方がより広い意味を示しています。

 

流産の起こる確率は年齢にもよりますが、自然流産は通常1回の妊娠当たり約15%と一定の頻度で起こり、病的なものではありません。厚生労働省の調査では、妊娠経験のある女性の38%が流産を経験していて、40代以上の妊娠では40%以上に起こると言われています。しかし、反復流産・習慣性流産の方が何も治療を受けられずに次の妊娠を迎えられる場合、流産2回目以降の次の妊娠での流産率は23%、3回目以降では32%にもなるため、2回目の流産の時点で不育症の検査や治療をうけることが推奨されています。

 

 

 

不育症の原因と西洋医学の治療方法

 

不育症の調査や研究が進み、明らかになった原因もありますが、不育症の60%以上は胎児染色体異常や原因不明の流産であり、未だ西洋医学での治療方法が確立していません。まずは分かる原因を探ることが、不育症治療の第一歩です。

 

① 抗リン脂質抗体陽性・血液凝固因子異常

抗リン脂質抗体という自己抗体や、プロテインS欠乏、プロテインC欠乏、第Ⅶ因子欠乏などといった血液凝固因子異常によって、血栓が出来やすくなります。血栓ができると胎盤の血流の流れを悪くしてしまうため胎児の発育が妨げられ、流産を引き起こします。西洋医学の治療では、低用量アスピリン・ヘパリン療法を用いることにより70%~80%において生児獲得可能といわれています。

② 内分泌異常(ホルモン異常)

甲状腺ホルモンの異常、インスリンというホルモンの異常により、胎盤や胎児の発育に障害をきたすため流産を引き起こします。ホルモン異常を引き起こす原因となる疾患をコントロールしてから妊娠に臨む必要があります。

③ 子宮奇形

重複子宮、双角子宮、中隔子宮、単角子宮などの子宮奇形により、子宮の中で胎児を育てるスペースの変形や、胎児への血液の流れが不十分になることから流産を引き起こします。手術療法が有用かどうかは、その症例ごとに検討されますので、専門医とよく相談なさってください。

④ 夫婦の染色体異常

夫婦の染色体異常により、受精卵にも染色体異常がおこり流産を引き起こします。夫婦で染色体検査を受け、染色体異常が分かった場合には、遺伝カウンセリングを受けた上で受精卵の着床前診断(PGT-aなど)を受けます。検査の結果、染色体が正常な受精卵を子宮に戻すことで流産を防ぐことが可能となります。

⑤ 胎児染色体異常

例えば16トリソミーや21トリソミーなどのように、胎児の染色体の数に異常があり流産を引き起こすことがあります。不育症の一般的検査を行ったとしても原因が特定できない場合には、偶然に胎児の染色体異常による流産(偶発的流産)を繰り返していることが多く、不育症の治療を行わなくても、その後の妊娠で生児を獲得できる可能性が高いと言われています。しかし、35歳以上になると、卵子と精子の老化により染色体異常の頻度が高まるため、流産のリスクも高まります。

⑥ 原因不明

不育症の検査をしたとしても、西洋医学での原因がはっきり分からないケースが6割以上をしめています。

 

漢方で考える体質による不育症の対策

漢方の理論である中医学では、不育症に関わる状態を以下のように表して区別しています。

胎漏 たいろう 」:妊娠初期に少量の出血が現れること。

胎動不安たいどうふあん」:不正出血にくわえて腰やお腹の痛みが現れること。

堕胎だたい」:胎児の一部または全部が流出してしまい妊娠継続が不可能な場合。

滑胎かったい」:堕胎を繰り返す場合。

これらに対する数多くの臨床経験と治療方法は、「金匱要略」や「脈経」などをはじめとする中医学の古典の医学書に記載されています。

 

不育症は、中医学の内臓機能である五臓のうち「 じん 」と深い関係があります。「腎」は生命エネルギーの根源である「 せい 」を貯蔵し、成長・発育・老化を司り、ホルモン分泌に影響を与えています。したがって、良質な卵子、染色体異常のない正常な受精卵の発生、胎児の成長・発育、ホルモン分泌量などは、「腎」の状態に大きく左右されると考えます。

 

また、不育症は「 」「 けつ 」「津液 しんえき 」の過不足や全身をめぐる循環の停滞と深い関わりがあります。

「気」:エネルギー、身体を温める力、血液・体液・内臓をあるべき場所に保持する力、代謝力、免疫力のこと。

「血」:全身を栄養して、精神活動を支えるもの。

「津液」:血以外の体液で、身体全身を潤すもの。

この「気」「血」「津液」のどこに問題があるかを見極め、漢方薬や鍼灸による対策を立てます。

 

①腎の虚弱体質
<<腎気不固 じんきふこ >>

 

身体の状態:生まれつきの虚弱体質、過労、慢性疾患、年齢による老化、性生活の過多などによって、生命エネルギーである腎の気が不足し、健全な妊娠・出産をする力が弱っている状態です。

治療方法:不足している腎の気を補う「補腎固渋 ほじんこじゅう 」の治療を行います

 

漢方

八味地黄丸、牛車腎気丸、亀鹿二仙丸、菟絲子、杜仲など

ツボ

太谿、腎兪、関元、八髎穴など

 

 

腎の虚弱体質
<<腎陰虚 じんいんきょ >>

 

身体の状態:生まれつきの虚弱体質、睡眠不足、過労、慢性疾患、年齢による老化、性生活の過多などによって、腎の陰液が不足し、健全な妊娠・出産をする力が弱っている状態です。

治療方法:不足している腎の陰液を補う、「滋補腎陰 じほじんいん 」の治療を行います

 

漢方

杞菊地黄丸、六味地黄丸、女貞子、旱蓮草、亀板など

ツボ

腎兪、肝兪、復溜、照海など

 

 

気と血の不足体質
<<気血両虚 きけつりょうきょ >>

 

身体の状態:生まれつきの虚弱体質、飲食の偏りや栄養不足、胃腸虚弱、過労、出血性の病気、慢性病などにより、受精卵や胎児を成長させるためのエネルギーや栄養が不足している状態です。

治療方法:不足している気と血を補う「補気補血 ほきほけつ 」の治療を行います。

 

漢方

六君子湯、補中益気湯、芍薬、熟地黄、人参、白朮など

ツボ

三陰交、足三里、気海、関元、脾兪など

 

 

気と血の滞り体質
<<気滞血瘀 きたいけつお >>

 

身体の状態:精神的緊張やストレス、プレッシャー、食べすぎ、飲みすぎなどにより、気の巡りが停滞して、血行不良を引き起こしています。受精卵や胎児を成長させるためのエネルギーや栄養が上手く行き届かない状態です。

治療方法:滞っている気と血の巡りを改善する「理気活血りきかっけつ」の治療を行います。

 

漢方

血府逐瘀湯、芎帰調血飲第一加減、香附子、莪朮、三棱など

ツボ

太谿、間使、三陰交、百会など

 

 

 

 

生活養生

・睡眠時間は7時間を目安に、早寝早起きを心掛けましょう。23時には就寝するようにします。

・黒豆、黒きくらげ、黒ゴマ、黒米、ひじき、松の実、枸杞の実、レバー、クルミ、栗などの腎を強くする食材を取り入れてみましょう。黒いものや豆・種子類などをとりましょう。

・流産は出産と同じくらい身体に大きな負荷がかかっています。流産後は3か月間ほど身体作りを行ってから次の妊娠を考えることをおススメします。

・流産後の、悲しみ、つらさ、怒り、不安、自分を責める気持ちなどはごく自然なものです。抑え込まずに、泣いたり、落ち込んだり、感情をぶつけたり、物思いにふけったり、素直に感情を出すことも大切です。自分の感情をダメだと思わずに許してあげましょう。

 

 

 

不育症でお悩みの方へ

漢方薬の服用や鍼灸の治療では、自分の体質をきちんと確認することが大切です。同じ不育症でお悩みの方でもタイプが異なれば、適した治療方法や治療方針が異なります。自分に合った漢方薬や鍼灸治療を選択するために、まずは専門家にしっかり相談しましょう。

それとともに、不育症という非常にセンシティブで、辛い経験を相談できる場所や専門家が必要だと考えます。誠心堂グループでは経験豊富な中医学アドバイザーやカウンセリングの講義を受講したスタッフが相談をサポートしています。お一人で悩まずに、ぜひご相談ください。

 

 

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