漢方薬辞典-ら行

 

六君子湯 りっくんしとう

効能効果

胃炎、胃アトニ―、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

配合生薬

人参(ニンジン)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、半夏(ハンゲ)、陳皮(チンピ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)

出典

《万病回春》補益門に「脾胃虚弱(胃腸が弱く),飲食少思(あまり食べたくなく),あるいは久しく瘧痢(悪寒発熱を伴う下痢)を患い,もしくは内熱を覚え(体の中に熱感があり),あるいは飲食化しがたく(消化しづらく),酸をなし(胃酸が出て),虚火を属する(気が不足したことによって渋滞した熱)を治す」とある。

方意と構成

気を養い脾胃(胃腸)の消化吸収機能を助ける「四君子湯」に、胃内停水を除く半夏・陳皮を配合している。

(管理No.02-212)

 

六効散 りっこうさん

効能効果

抜歯後の疼痛、歯痛

配合生薬

細辛(サイシン)、升麻(ショウマ)、甘草(カンゾウ)、防風(ボウフウ)、竜胆(リュウタン)

出典

《蘭室秘蔵》に「牙歯痛忍ぶべからず(歯が痛くて我慢できず),頭脳項背に及んで痛む(頭から項背部にかけて痛む)。微に寒飲を悪み,大いに熱飲を悪む(少し冷たいものや非常に熱いものを嫌がる)。(中略)水1盞を持って,煎じて7分に至る。かすを除き匙をもってすくい,口中の痛むところへ処きてしばらくして止む(匙ですくって口の中の痛いところにおくとしばらくして痛みが止む」とある。

方意と構成

歯の痛みに用いられる。

温性の細辛・防風と、涼性の升麻・竜胆の配合によって平性(温めも冷やしもしない性質)の祛風止痛剤(風邪を取り去ることによる痛み止め)になっている。細辛には局所麻酔効果もあるため、口中に含んで歯痛部にとどめると止痛の効果がつよまる。

(管理No.02-220)

 

竜胆瀉肝湯 りゅうたんしゃかんとう

効能効果

排尿痛、残尿感、尿のにごり、こしけ

配合生薬

当帰(トウキ)、地黄(ジオウ)、木通(モクツウ)、黄芩(オウゴン)、沢瀉(タクシャ)、車前子(シャゼンシ)、竜胆(リュウタン)、山梔子(サンシシ)、甘草(カンゾウ)

出典

《万病回春》に「肝経の湿熱(肝経の炎症が強く水分代謝が悪い状態),あるいは嚢癰(副睾丸炎),便毒(鼠径リンパ節の炎症),下疳(性感染症),懸癰(会陰部の腫れもの),腫痛焮作(焼けつくように熱をもち疼く),小便渋滞(尿がすっきり出ず渋る),あるいは婦人陰癃(外陰部の炎症),痒痛,あるいは男子陽挺(亀頭部)腫脹,あるいは膿水を出すを治す」とある。

方意と構成

本方は肝と胆の熱を去り、湿熱(炎症が強く水分代謝が悪い状態)を清する効能を持つ。膀胱炎・わきが・子宮内膜炎・陰部痒痛・睾丸炎・陰部湿疹・性感染症などに応用される。

竜胆草が主薬で肝胆の熱をとり湿熱を清する。黄芩・山梔子は熱を去るとともに三焦における水と気の巡りを整え竜胆草を補佐する。これに、上部の熱を降ろし小便として湿熱を除く沢瀉・木通・車前子、清熱と諸薬の調和に働く甘草、陰血(体液と血)を養い炎症による消耗を防ぐ生地黄・当帰が配合されている。

(管理No.02-213)

 

苓甘姜味辛夏仁湯 りょうかんきょうみしんげにんとう

効能効果

気管支炎、気管支ぜんそく、動悸、息切れ、むくみ

配合生薬

茯苓(ブクリョウ)、甘草(カンゾウ)、半夏(ハンゲ)、乾姜(カンキョウ)あるいは生姜(ショウキョウ)、杏仁(キョウニン)、五味子(ゴミシ)、細辛(サイシン)

出典

《金匱要略》に「水去り嘔止み(胃内の水飲が除去されて嘔吐は止んだが),その人の形腫るるは(浮腫が生じているのは),杏仁を加えこれを主る(杏仁を加えてこれを去る)。その証まさに麻黄を内るるべきも,その人は遂に痺するをもって,故にこれを内れず(麻黄で発散するのが通常だが手足のしびれがあるために用いない),もし逆いてこれを内れれば必ず厥す(もし逆らって麻黄を用いればショックを引き起こす),然るゆえんは,その人血虚するをもって,麻黄はその陽を発するが故なり(血虚があるため、麻黄により発汗過多になるためである)」とある。

方意と構成

本方は、体表の病邪を去り水毒を除く「小青竜湯」から麻黄・桂枝・芍薬を去り、浮腫を消退する茯苓・杏仁を加えた処方で、発熱・悪寒・頭痛・身体疼痛などの表証(病邪による病で初期に現れる病症)がなく、貧血の傾向があり、寒がって手足の冷えるものに用いる。小青竜湯と同じような症状に使われるが、体質虚弱と胃腸が弱いものを対象としている。

(管理No.02-221)

 

苓姜朮甘湯 りょうきょうじゅつかんとう

効能効果

腰痛、腰の冷え、夜尿症

配合生薬

茯苓(ブクリョウ)、乾姜(カンキョウ)、白朮(ビャクジュツ)あるいは蒼朮(ソウジュツ)、甘草(カンゾウ)

出典

《金匱要略》に「腎著の病は(腎著の病とは),その人身体重く(体が重だるく),腰中冷えて水中に坐するがごとく(腰が冷えて水中に座っているようで),形は水状の如くで(体が浮腫んで),反って渇せず(口渇はなく),小便自利(尿量が多く),飲食故の如し(飲食は平常と変わりがない)病は下焦に属す(体の下部に属する病である)。身労して汗出て(疲労により汗が出て),衣裏冷湿し(衣類が冷たく湿り),久久これを得て(これを長い間やっていると病気になり),腰以下冷痛し(腰より下が冷えて痛み),腰重く五千銭を帯びたる如し(腰が重く五千銭の重さを帯びるようである)。甘草乾姜茯苓白朮湯これを主る」とある。

方意と構成

本方は寒冷と水の停滞を除く。体が重く、水湿が下半身に溜まって、特に腰や足が重く冷え、小便が多量に出るものに用いる。温めて血行をよくし寒湿を去る乾姜が主薬で、これに水湿を除去する茯苓・白朮、諸薬の調和に働く甘草を加えている。

(管理No.02-214)

 

苓桂甘棗湯 りょうけいかんそうとう

効能効果

どうきがあり,神経のたかぶるもの

配合生薬

茯苓(ブクリョウ)、桂皮(ケイヒ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)

出典

《傷寒論》太陽病中篇に「発汗後その人(発汗した後),臍下悸するものは奔豚を作さんと欲す(臍下が動悸するものは発作的に突き上げて激しい心悸亢進を起こす)。苓桂甘棗湯これを主る」とある。

方意と構成

下腹部から突き上げてくるような発作性の激しい動悸(奔豚)や疼痛に用いる。

桂皮は気血を巡らし、気の上衝(気が下から上に突き上げるもの)を鎮める。甘草は発作を緩和し、胃を助け毒を解す。桂皮と甘草からなる桂枝甘草湯は発汗過多による心悸亢進を治すのに働く。茯苓は水の停滞を除き、体内の水分偏在を調節して動悸を鎮め衝逆を下す。大棗は筋肉のひきつりやこわばりを緩和する。この4味の協力により臍下の気を鎮める。

(管理No.02-215)

 

苓桂朮甘湯 りょうけいじゅつかんとう

効能効果

立ちくらみ、頭重、胃内停水感などあるもの。心悸亢進症、めまい、胃下垂、胃アトニ―

配合生薬

茯苓(ブクリョウ)、桂皮(ケイヒ)、甘草(カンゾウ)、白朮(ビャクジュツ)

出典

《傷寒論》太陽病中篇に「傷寒(急性熱性病),もしくは吐し,もしくは下して後(吐かせるか便で下した後),心下逆満(下から上に向かって突き上げられ),気上がって心を衝き(気の上逆で心下部を突き),起きればすなわち頭眩し(起きるときにめまいがして),脈沈緊(脈は沈緊で),汗を発すればすなわち経を動かし(発汗により痙攣を起こし),身振振として揺をなす者(動揺性症状を呈するもの)は苓桂朮甘湯これを主る」とある。

方意と構成

心下部に水の停滞(支飲)があり、水と気の上衝(気が下から上に突き上げるもの)によって起こる、のぼせ・めまい・息切れ・心悸亢進・身体動揺感・尿量減少に用いる。

茯苓が主薬で白朮とともに胃内停水を去り、脾の運化(胃腸の働き)を促進して水湿の産生を防ぐ。桂皮は温めて血行をよくし、水の代謝を高める。炙甘草は桂皮を助けて気を巡らし、諸薬の調和を行う。

(管理No.02-216)

 

連珠飲 れんじゅいん

効能効果

更年期障害、立ちくらみ、めまい、動悸、息切れ、貧血

配合生薬

当帰(トウキ)、白朮(ビャクジュツ)あるいは蒼朮(ソウジュツ)、川芎(センキュウ)、甘草(カンゾウ)、芍薬(シャクヤク)、地黄(ジオウ)、茯苓(ブクリョウ)、桂皮(ケイヒ)

出典

《内科秘録》に「血虚(血の不足で),眩暈,心下逆満(下から心下部に向かって突き上げられる)し,発熱,自汗、婦人の百病を治す」とある。

方意と構成

胃内の水の停滞による気の上衝(気が下から上に突き上げるもの)を解消する「苓桂朮甘湯」と血を補い巡らせる「四物湯」の合方である。更年期障害などに伴う自律神経症状と、動悸・めまい・頭痛・貧血など血虚の症状があるものに用いる。

(管理No.02-217)

 

六味丸(六味地黄丸) ろくみがん(ろくみじおうがん)

効能効果

排尿困難、頻尿、むくみ、かゆみ

配合生薬

地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンピ)

出典

《小児直訣》に「地黄圓(地黄丸),治腎虚失音(腎の虚弱で言葉が出ない),顖開不合(頭の泉門が閉鎖せず),神不足(精神神経が未発達で),目中白睛多く(瞳が白く濁り),面色皝白等(顔色が白い)の証を治す」とある。

方意と構成

まず八味地黄丸があって、小児に使うため、小児は発育期で陽気が盛んだから、陽気を増やす桂皮・附子を去って使ったという。小児に限らず陽が盛んな人に用いる。

本方は三補三瀉の六味で構成されている。補(補う)の部分は、分量の多い地黄が主薬で腎の液を養い血を生む役目を果たしている。山茱萸は肝腎を養い精を漏らさず汗を止め、山薬は脾胃(胃腸)の機能を高めて精や尿が漏れ出るのを防ぐ。瀉(取り除く)の部分は、牡丹皮が血熱(血に熱がこもった状態)を冷まし、沢瀉が熱と水の停滞を除き、茯苓が虚熱(陰血が不足したために生じた熱)をとるとともに病的な水滞を処理する。

(管理No.02-218)