育児ケア
乳児湿疹

「乳児湿疹は、生まれて間もない赤ちゃんのほとんどが経験します。」

初めての子育ての方では、赤ちゃんの皮膚トラブルで心配になったり、対応に悩んだりと不安になりますね。皮膚トラブルでは正しい知識を知ると対応方法が見えてきます。より自然な方法で赤ちゃんのケアをしたい方にオススメするのが中医学。中医学は漢方や鍼灸といった治療の理論で、もしかすると難しいと感じる方もいるかもしれませんが、自然を基本とした考えのため安心して取り入れやすいですし、数千年も前より実際に試されている医学でもあります。中医学の考えを知って、赤ちゃんのケアや予防にぜひ役立ててください。

乳児湿疹の症状は数週間で治まるものから1歳頃まで繰り返したりするものもあったりと様々です。原因もいくつかあり、乾燥や湿気といった季節的な要因や皮膚の汚れ、母乳や離乳食などが影響することもあります。そのため基本のケアとして清潔に保つことと保湿がポイントです。


清潔に保つための入浴

湯船の温度が熱すぎないように注意し、長湯しないように手早く入りましょう。
熱さは刺激となり、痒みを引き起こしやすくなります。
皮脂を落としすぎないよう赤ちゃん用のボディソープを使用し、よく泡立てて撫でるようにやさしく洗います。
皮膚と指に泡のクッションがあるイメージでこすらないように洗うといいでしょう。


清潔に保つ

汗をかいた場合

汗をかくことは悪いことではありません。汗と一緒に老廃物を排泄することができるからです。 ただし、汗をかくとエネルギーを消耗してしまうため、必要以上に汗をかかないように温度を調整しましょう。また、汗をかいたらすぐに拭いて、しっかりと水分をとりましょう。汗をかくと体が冷えやすくなりますので、必要以上に冷えないように気を付けます。


爪を切りましょう

痒みがあるとどうしても掻いてしまいますね。赤ちゃんの爪は薄く、皮膚を傷付けやすいですし、できるだけ爪を短くし、傷口からばい菌が入らないように清潔にしましょう。


お肌の保湿ケア

お風呂上がりには保湿剤はたっぷりつけましょう。夏にはしない人もいますが、ぜひ続けてください。乾燥すると、痒みを悪化させます。また、生後1週間から保湿剤を全身に塗ることでアトピー性皮膚炎の発生率が低下したというデータもあります。




「中医学での乳児湿疹の考え方」

中医学では、『湿疹』という文字にある通り、湿気が影響すると考えています。 この湿気は2種類あります。一つは、気候による梅雨時期などに感じる湿度によって悪さをする「湿邪しつじゃ」と呼ばれるもの。「湿邪」の多い環境に長くいたりすると赤ちゃんの未熟な皮膚に悪さをして湿疹になります。特に「湿邪」の影響を受けると症状は長引きやすくなります。
もう一つは身体の中で溜まってしまった余計な水分である「痰湿たんしつ」です。通常、身体の中に入った水分は尿・汗・潤いなどに変わりますが、身体の中で上手く処理しきれないと「痰湿」になります。胃腸の負担になりやすい、冷たいものや味の濃いものなどを多く食べると身体の中で「痰湿」が生まれやすくなるので、注意が必要です。
湿気以外にも赤みや痒みを悪化させる原因として、かゆみに関係する「ふう」や炎症に関係する「ねつ」も重要です。特に、梅雨から夏にかけて、気温が上がると「熱」をもちやすくなり赤み・痒みが出やすくなります。

中医学では、この「湿」をいかに上手く処理して、「風」を起こさず、「熱」を冷ますかがポイントです。
中医学の原因から、生活の中で気を付けるポイントをご紹介します。


食べ物

辛いもの・チョコレート・コーヒーなどの刺激物、味の濃いものや生もの、冷たすぎるものは避けましょう。湿疹が出ている子どもはもちろん、母乳をあげているお母さんも控えましょう。
中医学では、これらの食物は水分を処理する胃腸に負担をかけて「湿」を生みやすくすると言われています。さらに、辛いものは「熱」のもととなり、「風」を起こしやすくします。


食べ物

寝具・睡眠

一日の大半を寝て過ごす赤ちゃんにとって寝具は大切です。
赤ちゃんは体を温めるエネルギーである「よう」が大人よりも多く、それが「熱」に変わりやすい体質をもっています。痒みや不快感などで眠れないと余計に「熱」が生まれやすくなり、悪循環を生みます。
良い睡眠は、体の栄養や潤いとなる「いん」を養います。「陰」は「陽」が昂らないようにバランスをとっていますので、「陰」をしっかり補えるよう、睡眠の環境を整えてあげましょう。
寝具はこまめに取り換えるか洗濯をして清潔に保ちましょう。


乳児湿疹に限らず、赤ちゃんは「陰陽」が未熟で、代謝も安定していないので、小さければ小さいほど症状の変化も速く、一気に悪化するように見えるかもしれません。しかし一方で、適切なケアをすれば早く改善できます。


最近は湿疹からアレルギーやアトピー性皮膚炎への関連も指摘されており、赤ちゃんの皮膚トラブルに敏感になっている人は多いです。また、普段一緒にいて、真剣に向き合っているおうちの人ほど責任を感じ、自分を責めてしまう人も多い印象があります。


必要以上に自分を責めず、必要に応じて病院や専門家をうまく利用しましょう。せっかく家族になってくれた赤ちゃんとより心身ともに健康で過ごせるよう、ぜひお手伝いさせてください。



小児推拿しょうにすいな

中医学では、赤ちゃん特有のツボを刺激して体質を改善する小児推拿という治療があります。「さする」「もむ」の2種類の方法でツボを刺激してみましょう。今回は「さする」刺激についてご紹介します。

小児推拿を行う際のポイント

1
ジュクジュクした箇所には行わない。
2
書かれた順番にこだわらず、触れる箇所から行う。
3
赤ちゃんの機嫌が良い時に、マッサージをする人もゆったりとした気持ちで行う
4
「さする」の手技はベビーパウダーやベビーオイルを使いましょう。何もつけずに行うと皮膚を傷付ける可能性があります。お風呂上りにいつも使っている保湿剤などでもいいですよ。

さする

(1~4全て片手のみ行います。行いやすい、ジュクジュクしていない方を選んでください)

さする

1. 補脾経ほ・ひけい:親指の外側を指先から掌に向かって(300回)
「湿」の処理を助けます。下痢などおなかの調子が悪い時にも。

2. 清肺経せい・はいけい:薬指の手掌側を指の付け根から指先に向かって(300回)
皮膚は中医学で考える「肺」の臓腑と関係が深いため、肺のツボを刺激して皮膚を健やかにします。

3. 清天河水せい・てんかすい:肘の内側から手首に向かって(300回)
身体の中に溜まっている「熱」を冷まします。湿疹の赤みや痒みが強い場合にも。

4. 推三関すい・さんかん:親指すぐ下の手首から肘にむかって(300回)
身体の元気を助け新陳代謝を高めます。冷えや虚弱体質にも。





もむ

(1~3全て両足に行います)

さする

1. 陰陵泉いんりょうせん:膝のすぐ下の内側(200回)
「湿」の処理を助けます。

2. 血海けっかい:膝の上の内側(200回)
乾燥している際に。痒みが強い場合にも。

3. 風市ふうし:太腿の外側の中央(200回)
痒みをひき起こす「風」を抑えます。


全てを行う必要はありません。皮膚の症状に合わせて、できるものから始めてみて下さいね。 赤ちゃんが嫌がったら途中で止めても構いません。子どもの機嫌がよい時に、ゆったりとした気持ちで行いましょう。

大切なのは手順や回数よりも、赤ちゃんが気持ちよさそうにしているか・推拿をする人もゆったりとした気持ちでできているかです。

家庭で行うケアは赤ちゃんの気持ちや身体にとってプラスになるだけでなく、お母さんにとっても赤ちゃんとのコミュニケーションや気持ちの安定につながります。ただし、赤ちゃんの不調を家庭で抱える必要はありません。

乳児湿疹に限らず、赤ちゃんの体調で不安を感じたら、一人で抱えずに専門家を頼りましょう。小児科の先生や助産師さん、保健婦さん、もちろん漢方の専門家や鍼灸師もサポートいたします。




公開日:2022-10-01
更新日:2023-12-06

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