体質で考える「尋常性乾癬」

更新日:2023.11.17

 

 

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)とは?

体質で考える「尋常性乾癬」

体質で考える「尋常性乾癬」

大小様々な赤い発疹の上に、銀白色のフケのようなものが付いて、ボロボロと剥がれ落ちる皮膚病です。健康な方と比べて約10倍の速度でターンオーバーが進行し、角質が盛り上がって厚くなっており、頭皮や髪の生え際、肘や膝、腰まわりやお尻などこすれる場所に出やすい傾向があります。“尋常”とは“普通”という意味であり、乾癬を患う方のうちの約8~9割が尋常性乾癬です。ほかにも関節にできる“乾癬性関節炎”、小児や若年者に多い“滴状乾癬(てきじょうかんせん)”、全身に広がる“乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)”、膿をともなう“膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)”などがあります。

 

尋常性乾癬の原因と治療

生まれ持った遺伝的素因に環境因子が加わることで免疫系が活性化され、炎症が引き起こされるといわれています。

食生活
高脂肪に偏った高カロリー食や肥満の状態は乾癬を悪化させる一因となります。

紫外線
紫外線が減る冬に悪化しやすい傾向があります。

薬剤
高血圧の薬などで乾癬型の薬疹が出ることがあります。

感染症
溶連菌感染後に発症することがあります。

ストレス
精神的ストレスは乾癬悪化の要因になります。

治療では、通常ステロイドやビタミンD3などの外用薬が用いられますが、ビタミンAや免疫抑制剤などの内服薬を使うこともあります。また、紫外線照射、ナローバンドUVBなどの光線療法も行われます。

 

漢方で考える尋常性乾癬

中医学では、尋常性乾癬を“免疫低下“と“免疫過剰”の状態と捉え、免疫が低下すればそれを高め、過剰な場合はそれを抑えるようにしていきます。また、中医学の理論では、皮膚は内臓と密接な関係を持つことから、“皮膚は内臓の鏡”と呼ばれており、内臓の機能を高めてバランスを取り戻し、繰り返さないような肌質作りをしていきます。

 

中医学体質別治療法

① 湿熱(しつねつ)体質
身体に滞っている湿と熱によるもので、入浴後や飲食後に悪化することが多い。
随伴症状:身体が重だるい、のぼせ、口臭、吹き出物が出やすい、むくみなど。
アルコールや脂っこいものをとることで悪化しやすく、長期化する傾向があります。

 

漢方

茵蔯五苓散、竜胆瀉肝湯など

ツボ

陰陵泉、曲池など

食材

ハトムギ、とうもろこし、冬瓜、緑豆、きゅうり、くちなしの実など

 


② 血熱(けつねつ)体質
血中に熱がこもるもので、夜間の痒みが強く、かきむしって出血することがある。
随伴症状:発熱、のぼせ、目の充血、頭痛、イライラ、便秘、不正出血など。
暴飲暴食をしたり、辛いものを食べる食生活や、ストレスによって熱が生じ、炎症症状が起きやすくなります。

 

漢方

温清飲、桃核承気湯など

ツボ

百虫窩、血海など

食材

苦瓜、すいか、ナス、きゅうり、緑茶、くちなしの実など

 


③ 血虚(けっきょ)体質
血(けつ)の不足により、皮膚を栄養することができず、ザラザラと乾燥して痒くなる。
随伴症状:めまい、立ちくらみ、顔色が白い、眼精疲労、不眠、動悸、脱毛など。
疲労や出血、睡眠不足などにより血が不足して、皮膚の栄養となる血を送り届けることができません。赤みは少ないけれど痒みが強く、掻き傷が多くなります。

 

漢方

当帰飲子、七物降下湯など

ツボ

足三里、三陰交など

食材

人参、ほうれん草、なつめ、黒ごま、クコの実、プルーンなど

 


④ 脾虚(ひきょ)体質
胃腸が弱り、エネルギー不足になることで、皮膚の免疫系のバランスが乱れる。
随伴症状:食欲不振、食後に眠くなる、軟便、お腹の張り、疲れやすい、むくみなど。
胃腸の働きが低下すると、身体に必要な気を作ることができず、皮膚の防御機能が低下します。そのため、日光、寒冷や温熱の刺激、発汗などの影響を受けやすくなります。

 

漢方

六君子湯、補中益気湯など

ツボ

中脘、胃の六つ灸など

食材

豆腐や湯葉などの大豆製品、卵、いんげん豆、山芋など

 


⑤ 血瘀(けつお)体質
血行不良で乾癬が悪化しやすい。皮膚は黒ずみやすく、治ったあとも色素沈着が残りやすい。
随伴症状:肩こり、頭痛、唇の色が悪い、シミやくすみが目立つ、冷えのぼせなど。
炎症状態が続いていたり、ストレスや冷えで血行不良が起きると、老廃物を外に出すことができず、より一層治りづらくなります。

 

漢方

血府逐瘀湯、桂枝茯苓丸など

ツボ

血海、三陰交など

食材

蓮根、ナス、チンゲン菜、黒きくらげ、玉ねぎ、紅花など

 

 

 

尋常性乾癬の鍼灸治療

第一段階  急性発作を抑える
赤みや痒みが強い状態では、炎症を落ち着かせたり、皮膚への物理的な刺激によって痒みの感じやすさを和らげていきます。

第二段階  慢性症状の改善
炎症がおさまり、皮膚が乾燥して軽い痒みが続く状態では、皮膚に栄養と潤いを届けてバリア機能を回復させ、外からの刺激に負けない皮膚作りを行います。

皮膚疾患のある方は、一般的に胃腸が弱い体質が多く、熱をとったり皮膚の栄養となる血を養う生薬が胃腸の負担になる場合があります。鍼灸治療で胃腸機能を高め、より漢方の効果を引き出す相乗効果が期待できます。

 

暮らしのアドバイス

・肉より魚を食べるようにしましょう
・香辛料やコーヒー、喫煙などの刺激物は避けましょう
・バランスのとれた食生活をしましょう
・入浴の際に硬いタオルで洗ったり、タイトな服装をしたり肌を刺激しないようにしましょう
・ストレスをうまく発散しましょう