体質で考える「蕁麻疹」
蕁麻疹の原因と治療
蕁麻疹には、主にアレルギー性と非アレルギー性があり、原因は食物、感染、薬剤、日光、物理的な刺激、疲労、ストレスなど多岐に渡っているため、多くの場合、原因を特定するのは難しいとされています。アレルギーに関与する細胞から蕁麻疹を起こす物質(ヒスタミン)が放出されることで、皮膚の腫れや痒みを引き起こします。治療としては、原因を取り除くことと、抗ヒスタミン薬などの薬剤を使いアレルギー症状を抑えます。
漢方で考える蕁麻疹
中医学において、蕁麻疹が出るかどうかは、“衛気(えき)”と呼ばれる身体の表面のバリア機能の良し悪しによります。衛気は、“肺”、“脾”、“腎”の機能と深く関わっており、そこに季節の環境変化(寒さ・暑さ・乾燥など)やストレスが重なると、アレルギー症状である蕁麻疹が発症すると考えられています。
肺 |
呼吸、免疫、皮膚などと関係が深く、身体に栄養素や水分を巡らせる働きがあり、肺が弱るとアレルギー、咳や痰、喘息症状が出やすくなります。 |
脾 |
消化吸収をして栄養分や水分の運搬などを担当しており、脾が弱ると気血(きけつ)などの栄養分を十分に吸収できず、粘膜が弱くなります。 |
腎 |
成長、発育、生殖、免疫などに関係しており、人体を構成する基本物質“精(せい)”を貯蔵しています。腎の機能が低下すると免疫機能に異常が出ます。 |
中医学体質別治療法
①
風熱(ふうねつ)体質
自然界における風と熱の邪気(人体に悪影響を与える自然環境の変化)により生じ、春~夏に出やすい傾向がある。
随伴症状:発熱、喉の痛み、鼻づまり、頭痛、関節痛など。
突然現れ突然消えるという特徴は、風の邪気によるものが多いです。特に上半身に出やすく、熱と結びつくと腫れや痒みが強くなり、皮膚は乾燥します。
漢方 |
消風散、十味敗毒湯など |
ツボ |
大椎、曲池など |
食材 |
苦瓜、冬瓜、きゅうり、たけのこ、蓮根、くちなしの実など |
②
風寒(ふうかん)体質
自然界における風と寒さの邪気(人体に悪影響を与える自然環境の変化)により生じ、秋~冬に出やすい傾向がある。
随伴症状:悪寒発熱、くしゃみ、無汗、咳、透明な痰、頭痛、関節痛など。
突然現れ突然消えるという特徴は、風邪(ふうじゃ)によるものが多いです。寒さの邪気と結びつくと赤みは少なく、冷たい風や冷房に当たると症状が悪化します。
漢方 |
桂枝麻黄各半湯、荊防敗毒散など |
ツボ |
大椎、風門など ※お灸を多用 |
食材 |
ネギ、生姜、シナモン、紫蘇、玉ねぎ、山椒など |
③
肺脾気虚(はいひききょ)体質
肺と脾のエネルギー不足により皮膚の新陳代謝が落ちる。
随伴症状:息切れ、咳、倦怠感、風邪を引きやすい、元気がない、食欲不振、むくみなど。
身体のエネルギーである気が不足すると皮膚における防御作用が低下するため、日光、寒冷や温熱の刺激、発汗などの影響を受けやすくなります。
漢方 |
玉屏風散、補中益気湯など |
ツボ |
足三里、気海など |
食材 |
豆腐や湯葉などの大豆製品、卵、いんげん豆、山芋など |
④
脾虚痰湿(ひきょたんしつ)体質
胃腸が弱り、皮膚の免疫の働きが落ちている。
随伴症状:食欲不振、食後に眠くなる、軟便、お腹の張り、疲れやすい、むくみなど。
胃腸機能が低下すると、身体に必要な気を作ることができず、皮膚の防御作用が低下します。
漢方 |
六君子湯、参蘇飲など |
ツボ |
太白、脾兪など |
食材 |
豆腐や湯葉などの大豆製品、卵、いんげん豆、とうもろこし、ハトムギなど |
⑤
腎虚(じんきょ)体質
身体に蓄えられるべきエネルギーが不足しており、アレルギー症状が出やすくなっている。
随伴症状:足腰がだるい、物忘れ、耳鳴り、頻尿、白髪、難聴、精力減退、むくみなど。
加齢や過労、睡眠不足などにより腎の機能が低下すると、免疫力が低下してアレルギーを引き起こしやすくなります。
漢方 |
六味地黄丸、瓊玉膏など |
ツボ |
腎兪、関元など |
食材 |
黒豆、黒きくらげ、アスパラガス、山芋、牡蠣、豚肉、卵など |
蕁麻疹の鍼灸治療
鍼灸治療では、肺、脾、腎の機能を高め、体表のバリアである衛気のバランスを整えることで、季節の環境変化(寒さ・暑さ・乾燥など)などの外的刺激から起きる症状の緩和をはかります。一人ひとりの体質に合わせ、根本的な原因にアプローチして改善に導きますが、慢性化している蕁麻疹は根気強く治療を継続する必要があります。
慢性蕁麻疹で使用される代表的なツボ:風池(ふうち)、血海(けっかい)、太淵(たいえん)など。
暮らしのアドバイス
動物性のたんぱく質や香辛料を避けましょう
疲れをためこまないようにしましょう
タイトな服装で皮膚を刺激しないようにしましょう
睡眠をしっかりとりましょう
自分の趣味などを持ち、適度な気分転換を心がけましょう