体質で考える「アレルギー」

体質で考える「アレルギー」

体質で考える「アレルギー」

更新日:2023.11.20

 

 

 

アレルギーとは?

人間の身体には、体外から異物(細菌やウイルスなど)が入ってきたときに排除しようとする自然の働きがあり、それを“免疫”といいます。異物を排除するときに、次回の侵入に備えて“抗体(こうたい)”と呼ばれる物質を作ります。この抗体は鼻、喉、目などの粘膜で待機して、異物が入ってきたときにヒスタミンなどの攻撃物質を放出して鼻水や咳、痰、涙として異物を外に出そうとします。 この正常な働きがなぜかコントロールできなくなり、抗体が増えすぎることがあります。すると、身体が過剰に反応して攻撃物質を多量に分泌するため、自分の細胞を傷つけるようになります。これがアレルギーです。つまり、自分を守るように働く正常な反応が“免疫”で、過剰な状態が“アレルギー”です。アレルギーとは決して特殊な病気ではなく、身体に必要な免疫機能が変形したものなのです。

 

アレルギーの原因と治療

血液検査、皮膚プリックテスト、食物経口負荷試験などの検査があります。一般的にアレルギーに使われる薬には抗ヒスタミン剤(ポララミンなど)、抗アレルギー剤(アレジオンなど)、ステロイド剤(セレスタミンなど)などがあります。このうち、ステロイド剤はすべての免疫反応を抑制するため劇的な効き目と即効性がありますが、長く使うと副作用の恐れがあり、かかりつけ医師の指導のもと使用することが推奨されます。

 
体質で考える「アレルギー」

漢方で考えるアレルギー

体質で考える「アレルギー」

中医学において、アレルギーは五臓のうち、主に“肺”、“脾”、“腎”と深く関わっています。また、季節の環境(寒さ・暑さ・乾燥など)やストレスが重なると、アレルギー症状が発症しやすくなると考えられています。

 


はい

免疫や皮膚、粘膜などの関係が深く、身体全体に栄養分や水分を散布する働きがあります。そのため、肺が弱ると咳や痰、アレルギー、皮膚炎、喘息症状が出やすくなる傾向があります。


消化吸収を行うため、脾が弱ると身体の細胞に必要な栄養や水分を十分に吸収できず、粘膜が弱くなったり、手足に力が入らなくなったり、むくみが出たりします。


じん

成長、発育、生殖、免疫などに関与するため、腎の機能が低下すると免疫において異常が出やすくなります。

 

 

 

中医学体質別治療法

① 肺脾気虚(はいひききょ)体質
肺と脾のエネルギー不足により、抵抗力が低下している。
随伴症状:息切れ、咳、疲労感、風邪を引きやすい、元気がない、疲れやすいなど。
気が不足すると防御作用が低下するため、細菌やウイルスが繁殖しやすくなったり、ハウスダストや気候変化など環境変化の影響を受けやすくなります。

 

漢方

玉屏風散、補中益気湯など

ツボ

肺兪、脾兪など

食材

豆腐や湯葉などの大豆製品、卵、いんげん豆、山芋など

 

 

② 脾虚痰湿(ひきょたんしつ)体質
胃腸が弱ることで水分代謝が悪くなり、老廃物がたまりやすくなる。
随伴症状:食欲不振、食後に眠くなる、軟便、お腹の張り、疲れやすい、むくみなど。
胃腸機能が低下すると、身体に必要な気を作ることができず、防御機能が低下します。また、水分代謝が悪くなることで毒素がたまりやすくなります。

 

漢方

六君子湯、参蘇飲など

ツボ

太白、脾兪など

食材

豆腐や湯葉などの大豆製品、卵、いんげん豆、山芋など

 

 

③ 腎虚(じんきょ)体質
身体に蓄えられるべきエネルギーが不足しており、アレルギー症状が出やすくなっている。
随伴症状:足腰がだるい、物忘れ、耳鳴り、頻尿、白髪、難聴、精力減退、むくみなど。
加齢や過労、睡眠不足などにより腎の機能が低下すると、免疫力が低下してアレルギーを引き起こしやすくなります。

 

漢方

六味地黄丸、瓊玉膏など

ツボ

腎兪、太谿など

食材

黒豆、黒きくらげ、黒ごま、山芋、卵、くるみ、アーモンドなど

 


アレルギー症状で使う代表的な漢方薬
小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯、葛根湯加川芎辛夷、辛夷清肺湯、荊芥連翹湯など。

 

 

アレルギーの鍼灸治療

肺、脾、腎の機能を高め免疫の調整をしたり、水分代謝をよくしていきます。また、アレルギー症状の悪化要因となる季節の環境変化(寒さ・暑さ・乾燥など)による身体への影響や、ストレスによる自律神経の乱れを整え、一人ひとりの体質に合わせて症状や体質の改善を行っていきます。

 

暮らしのアドバイス

・腸の負担になる生ものや冷飲食、水分の過剰摂取、油ものを避け、腹八分目にしましょう
・寒暖の差(特に冷房による冷え)に気をつけましょう
・規則正しい生活をおくりましょう
・ウォーキングをして血行をよくしましょう
・自分の趣味などを持ち、適度な気分転換を心がけましょう

 

大谷孝枝

監修 大谷孝枝

薬剤師・鍼灸師・国際中医専門員・中医薬膳師

中国漢方普及協会 学術委員

株式会社 誠心堂薬局 営業部課長


北里大学薬学部薬科卒

東京医療福祉専門学校鍼灸科卒