漢方薬辞典-な行

 

二至丸にしがん

効能効果

頭のふらつき、耳鳴り、足腰のだるさ、月経量が多い

配合生薬

女貞子(ジョテイシ)、旱蓮草(カンレンソウ)

出典

《医方集解》に記載がある。

方意と構成

陽の気が極まる夏至に収穫される旱蓮草と、陰の気が極まる冬至に収穫される女貞子。この二つの生薬から構成されることから「二至丸」と名付けられ、頭のふらつき・めまい・耳鳴り・更年期症状などに用いられる。

女貞子は肝腎を養い、目の症状を改善する"滋補肝腎・明目"に、旱蓮草は腎の陰(体液)と精気を養い、血の熱を冷ます"養陰益精・涼血"にそれぞれ働く。肝腎の陰虚(体液の不足)を滋養しながらも、滋膩(重くもたつくような性質)ではないという特徴がある。

(管理No.02-284)

 

二朮湯にじゅつとう

効能効果

四十肩、五十肩

配合生薬

白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、陳皮(チンピ)、香附子(コウブシ)、黄芩(オウゴン)、蒼朮(ソウジュツ)、天南星(テンナンショウ)、威霊仙(イレイセン)、羌活(キョウカツ)、半夏(ハンゲ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)

出典

《万病回春》に「痰飲(水や痰の停滞),双臂(両腕)痛むを治す。又,手臂(手首)痛むを治す。これ上焦に湿痰あり(体の上部に水湿や痰があるためである),経絡中を横行し痛みをなすなり」とある。

方意と構成

五十肩の薬方である。水毒性の体質で筋肉にしまりがなく、胃腸のあまりつよくない人で、腕や肩の痛むものに用いる。

主薬の白朮と蒼朮は余分な水湿を去り、消化機能を良くする効能がある。痰飲を去る「二陳湯」<化痰燥湿>に、上焦の風痰(風と痰が合わさったもの)をとる天南星<祛風燥湿化痰>、気の鬱滞を開く香附子<行気>、風寒湿の邪気(風と寒と湿の病邪が合わさったもの)を取り去る羌活・威霊仙<祛風湿・散寒>、湿熱(水分代謝が悪く熱がこもった状態)を解す黄芩<清熱利湿>を加えている。

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(管理No.02-161)

 

二仙湯にせんとう

効能効果

のぼせ、咽痛、めまい、耳鳴り、不眠

配合生薬

仙茅(センボウ)、淫羊霍(インヨウカク)、当帰(トウキ)、巴戟天(ハゲキテン)、黄柏(オウバク)、知母(チモ)

出典

上海曙光医院の経験に基づく処方である。

方意と構成

腎の陰陽両虚(体液や血の不足と、体を温める陽気の不足が同時に見られる状態)および虚火上炎(陰血が不足したために生じた熱)の両方が見られる更年期症状・高血圧症・無月経および慢性疾患などに用いられる。

腎の陽気をつよめる“補腎壮陽"の仙茅・淫羊霍・巴戟天、陰を養い内熱を抑える"滋陰降火"の知母・黄柏、さらに血を補い巡らせる"補血活血"の当帰を配合することにより、陰陽を同時に補いながら虚火を鎮める効果がある。

(管理No.02-285)

 

二陳湯にちんとう

効能効果

悪心、嘔吐、胃部不快感、慢性胃炎、二日酔

配合生薬

半夏(ハンゲ)、茯苓(ブクリョウ)、陳皮(チンピ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)

出典

《和剤局方》痰飲門に「痰飲(水や痰の停滞)が患をなし,あるいは嘔吐悪心,あるいは頭眩心悸(めまい・動悸),あるいは中脘快からず(みぞおちが不快で),あるいは発して寒熱をなし,あるいは生冷(生ものや冷性食品)を食うに因り,脾胃和せざる(胃腸の働きの不調和)を治す」とある。

方意と構成

脾胃虚弱で痰を生じている様々な疾患の基本処方として用いられ、胃腸の機能を良くして痰を消す代表的な処方である。

主薬は半夏で燥湿化痰(水が澱んで濁り水や痰が停滞した状態を改善)し、嘔吐や吐き気を止める<和胃降逆・止嘔>。陳皮は気を巡らせて痰飲を取り去り半夏を補佐する<理気燥湿>。これに胃腸の機能を高めて水の代謝を良くする茯苓<健脾利湿>、脾胃を温め新たな痰の生成を防ぐ生姜<温中祛湿>、諸薬の調和をする甘草を加えたものである。

(管理No.02-162)

 

二妙丸にみょうがん

効能効果

疼痛、しびれ、下肢の軟弱無力

配合生薬

黄柏(オウバク)、蒼朮(ソウジュツ)

出典

本方は《世医得効法》に蒼朮散として記載されており、《丹渓心法》で二妙散と改名された。現在では多くは丸剤として用いられ、二妙丸と称している。

方意と構成

湿熱(水分代謝が悪く熱がこもった状態)が下焦(体の下部)に停滞して生じる様々な病態に用いられる。

熱を冷まし水の停滞を除く黄柏<清熱燥湿>に、つよく湿を取り除く蒼朮<燥湿利水>を加えることにより、清熱と燥湿の効能が得られる。

(管理No.02-286)

 

女神散にょしんさん安栄湯あんえいとう

効能効果

産前産後の神経症、月経不順、血の道症

配合生薬

当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、白朮(ビャクジュツ)あるいは蒼朮(ソウジュツ)、香附子(コウブシ)、桂皮(ケイヒ)、黄芩(オウゴン)、人参(ニンジン)、檳榔子(ビンロウジ)、黄連(オウレン)、木香(モッコウ)、丁子(チョウジ)、甘草(カンゾウ)、大黄(ダイオウ)

出典

《勿誤薬室方函口訣》に「血証(血の道症で)上衝(のぼせなど気が下から上に突き上げるもの)眩暈を治す,産前後通治の剤なり」とある。

方意と構成

陰血(体液と血)を養い疏泄(気血の巡りを伸びやかにする働き)をつよめて気機(気の昇り降りをする運動)を調節し、同時に上部の熱を抑え下肢を温める働きがある。

香附子・木香・檳榔子および温めて経絡を通じる桂枝により、肝の気を巡らせて整える<疏肝理気温通>。また、血を養う当帰と、気を養う人参・白朮の組み合わせは、血を養い肝の働きを柔軟にし、疏肝の効果を調和的に高める<養血柔肝>。黄芩・黄連は体の上部にこもった熱を冷まし、大黄は排便を促すことで熱を下方に導いて体外に排出する<清熱降火>。腎を温める丁香と肝を温める川芎は、下肢の冷えをとる役割を果たす<温腎暖肝>。

(管理No.02-163)

 

人参蛤蚧散にんじんごうがいさん

効能効果

咳嗽、呼吸困難

配合生薬

蛤蚧(ゴウカイ)、杏仁(キョウニン)、甘草(カンゾウ)、人参(ニンジン)、茯苓(ブクリョウ)、貝母(バイモ)、桑白皮(ソウハクヒ)、知母(チモ)

出典

《衛生宝鑑》に記載がある。

方意と構成

本方は長期にわたる咳嗽により肺の気が不足し、熱性の偏りが強くなっているものに適しており、病邪による急性の咳嗽には適さないという特徴がある。

主薬の蛤蚧は、肺と腎の経絡に入り、肺腎を養うことで気を納め、呼吸困難を鎮める<補肺益腎>。人参は元気を補い肺と脾(胃腸)を益し、茯苓は脾の機能を高めて水の代謝を良くし、痰の生成を防ぐ<補益肺脾・利湿>。桑白皮・杏仁は肺の気を降ろして咳を止め<降気止咳>、貝母は知母とともに肺の熱を瀉して潤す<清熱潤肺>。炙甘草は諸薬を調和する。

(管理No.02-287)

 

人参湯にんじんとう理中丸りちゅうがん

効能効果

胃腸虚弱、胃アトニー、下痢、嘔吐、胃痛

配合生薬

人参(ニンジン)、甘草(カンゾウ)、白朮(ビャクジュツ)あるいは蒼朮(ソウジュツ)、乾姜(カンキョウ)

出典

《金匱要略》胸痺篇に「胸痺(呼吸が苦しく胸に痛みがあり),心中痞留(みぞおちが痞え),気結在留(気が胸に結滞し),脇下逆槍心(脇の下から突き上げるように痛みがくるのは),枳実薤白桂枝湯主之,人参湯亦主之(枳実薤白桂枝湯の主治である,人参湯もまた主治である)」とある。

方意と構成

本方は胃の機能を高め、もたれを去り、血行を良くして新陳代謝を盛んにする。

主薬は乾姜で、脾胃(胃腸)を温めて陽気を補い冷えを除く<温中散寒>。これに、脾胃の気を養う人参<健脾益気>、胃腸の働きを高め余分な水湿を排出する茯苓<健脾利湿>、諸薬を調和する甘草を加えている。

(管理No.02-164)

 

人参養栄湯にんじんようえいとう

効能効果

病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血

配合生薬

人参(ニンジン)、当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、地黄(ジオウ)、白朮(ビャクジュツ)あるいは蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、桂皮(ケイヒ)、黄耆(オウギ)、陳皮(チンピ)、遠志(オンジ)、五味子(ゴミシ)、甘草(カンゾウ)

出典

《和剤局方》痼冷門に「積労虚損(長年の心身の疲労衰弱が積み重なり),四肢沈滞(手足が重だるく),骨肉酸疼(骨や筋肉がだるく傷み),吸吸少気(浅薄呼吸),行動喘啜(労作性呼吸困難),小腹拘急(下腹部がひきつれ),腰背強背(腰や背中がつよく痛み),心虚驚悸(ちょっとしたことで驚き動悸する),咽乾唇燥(のどや唇が渇いて),飲食味なく(飲食しても味がなく),陰陽衰弱(陰も陽も衰弱して),悲憂滲戚(悲しみ・憂いがあり),臥多起少(横になることが多く起きることが少ない),久しきものは積年(久しいものは長い年月),急なるものは百日,漸く痩削に至り(だんだんと痩せ衰え),五臓の気竭き(五臓の気がなくなり),振復すること難きを治す(復活することが難しいのを治す)とある」

方意と構成

気血両虚(気と血の両方が不足しているもの)で、不眠・動悸・不安などの精神不安症状や、慢性の咳・呼吸困難・息切れなど肺の気が下りない症候を伴うものに用いる。

“温補気血(気と血の両方を補い体を温める)"の「十全大補湯」から川芎を抜いて、咳を止める五味子<斂肺止咳>、痰を取り去る陳皮<理気化痰>、精神を安定する遠志<寧心安神>を加え、脾と肺を補う力をつよめた処方である。

(管理No.02-165)