腎臓が悪くなるとなぜ貧血になるの?原因と体の整え方を解説

腎臓が悪くなるとなぜ貧血になるの?原因と体の整え方を解説
第1章:腎臓が悪いと貧血になるのはなぜ?
第2章:腎臓病で貧血が起こる主な原因
第3章:漢方で考える腎臓の不調
第4章:腎性貧血で起こりやすい症状
第5章:腎性貧血の診断に用いられる主な検査
第6章:腎性貧血の主な治療方法
第7章:体質に合わせた漢方薬の考え方と処方例
第8章:補腎に使われる代表的な生薬とは
第9章:腎臓病による貧血を悪化させない生活習慣
まとめ:腎臓と貧血は体全体で考える


腎臓が悪くなると、なぜ貧血になるのか。検査で「腎機能が低下しています」「ヘモグロビンが低いです」と言われても、この2つの関係はすぐには見えにくいかもしれません。貧血というと鉄不足を思い浮かべがちですが、腎臓の状態が関係している場合、体の中では別の変化が起きています。腎臓は血液をつくる働きにも関わっており、機能が低下すると、気づかないうちに全身へ影響が広がります。

漢方ではこうした状態を、腎臓と貧血を切り分けるのではなく、体全体のバランスの乱れとして捉えます。この記事では、そのつながりと、体の土台から整える考え方を分かりやすく整理します。



第1章 腎臓が悪いと貧血になるのはなぜ?

腎臓が悪いと貧血になるのはなぜ?

1.1 腎臓は赤血球を作るホルモンに関わっている

腎臓は、余分な水分や老廃物を尿として排出するだけの臓器ではありません。血液をつくる仕組みにも関わっており、その中心になるのが「エリスロポエチン(EPO)」というホルモンです。EPOは主に腎臓でつくられ、骨髄に対して赤血球をつくるよう働きかけます。赤血球は酸素を全身に運ぶ役割を持つため、この働きが弱まると、体のあちこちが酸欠のような状態になり、疲労感や息切れ、だるさといった不調が起こりやすくなります。

健康な腎臓であれば、体の酸素不足を感じ取ってEPOの量を調整できます。ところが腎機能が低下すると、この調整がうまくいかず、赤血球が十分につくられにくくなります。これが、腎臓病で貧血が起こりやすい大きな理由です。

1.2 腎性貧血は「鉄不足だけではない」貧血

慢性腎臓病に伴って起こる貧血は「腎性貧血」と呼ばれます。鉄欠乏性貧血と違い、中心にあるのはEPO不足です。ただし、実際にはEPO不足だけで終わるわけではありません。食欲低下や食事制限、慢性的な炎症、透析に伴う影響などが重なり、鉄が足りなくなったり、体内に鉄があっても使いにくくなったりします。つまり、腎性貧血は一つの原因だけで起こるというより、いくつかの要因が重なって進みやすい貧血です。

1.3 初期は気づきにくく、検査で見つかることが多い

腎臓病も貧血も、ゆっくり進行することがあります。体が少しずつその状態に慣れてしまい、「前より疲れやすい気はするけれど、年齢のせいかも」と見過ごされることも少なくありません。

そのため、健康診断や通院時の血液検査で初めて気づくケースが多くあります。腎機能の数値とヘモグロビン値をあわせて見ることが大切なのは、このためです。

第2章 腎臓病で貧血が起こる主な原因

腎臓病で貧血が起こる主な原因

2.1 エリスロポエチン(EPO)の不足

腎性貧血の最も重要な原因は、EPO不足です。腎臓の機能が落ちると、EPOをつくる細胞もダメージを受け、分泌量が減っていきます。

すると骨髄に十分な指令が届かず、新しい赤血球をつくる力が弱まります。食事だけで改善しにくいことがあるのは、このように赤血球づくりの元の仕組みそのものが落ちているからです。

2.2 鉄不足

赤血球をつくるには、EPOだけでなく鉄も欠かせません。ところが腎臓病があると、食欲低下、食事制限、吸収の低下、微量な出血などが重なり、鉄不足が起こることがあります。

さらに厄介なのは、体の中に鉄があっても、慢性炎症の影響でうまく使えないことがある点です。検査では単純な鉄欠乏に見えない場合でも、実際には「赤血球づくりに使いにくい状態」になっていることがあります。

2.3 透析や栄養状態の影響

腎臓病が進み透析が必要になると、貧血はさらに目立ちやすくなります。透析そのものというより、透析を受けるほど腎機能が落ちていること、治療中の微量な血液損失、採血の積み重ねなどが影響します。

また、腎臓病のある方では、たんぱく質や鉄などの栄養が不足しやすいこともあります。こうした栄養状態の低下も、貧血を悪化させる要因になります。

第3章 漢方で考える腎臓の不調

漢方で考える腎臓の不調

3.1 「腎」は体の土台という考え方

漢方でいう「腎」は、単に腎臓という臓器を指すものではありません。生命力や成長、老化、水分代謝など、体を支える基盤として考えられています。

この働きが弱ると、疲れやすくなる、体が冷えやすくなる、むくみやすくなるなど、複数の変化が同時に現れやすくなります。貧血の背景に「なんとなく体力が落ちている」と感じる場合、こうした土台の弱りが関係していることもあります。

3.2 五臓(肝・心・脾・肺・腎)のつながり

中医学では、体は五臓のバランスによって保たれていると考えます。腎だけを切り離して見るのではなく、他の臓との関係の中で状態を捉えていきます。

たとえば、食事から栄養を取り込む力が弱くなれば、血をつくる材料が不足しやすくなります。血の巡りが悪くなれば、老廃物がたまりやすくなり、体の回復も遅れます。こうした変化が重なることで、腎にも負担がかかっていきます。

3.3 気・血・水のバランスが崩れると起こること

体は「気・血・水」の巡りによって保たれています。気が不足すると回復力が落ち、血が不足したり巡りが悪くなると、顔色不良やめまい、疲労感が出やすくなります。水の流れが滞ると、むくみや重だるさが強くなります。

腎臓の数値低下と貧血が重なる状態では、これらが単独ではなく重なっていることが多く見られます。漢方では、こうした複数の乱れを一体として整えていきます。



腎臓の数値低下と貧血が重なって気になる方は、検査値だけでなく、疲れやすさ・冷え・むくみ・食欲低下なども含めて体全体を見直すことが大切です。誠心堂薬局では、体質や生活習慣まで丁寧に確認し、漢方の視点から整え方をご提案しています。
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第4章 腎性貧血で起こりやすい症状

4.1 疲れやすい・だるい

腎性貧血でまず出やすいのが、疲れやすさやだるさです。少し動いただけで疲れる、休んでも回復しにくいという状態は、体に十分な酸素が届きにくくなっているサインかもしれません。

ゆっくり進むため、「最近なんとなくしんどい」で終わってしまうこともありますが、腎臓病がある方では見逃したくない変化です。

4.2 息切れ・動悸

貧血が進むと、体は酸素不足を補おうとして心臓をより働かせます。その結果、階段や坂道で息が切れやすくなったり、胸がドキドキしやすくなったりします。

以前より動くのがつらいと感じる場合は、単なる体力低下ではなく、貧血の影響が隠れていることがあります。

4.3 めまい・立ちくらみ・顔色不良

脳や全身に届く酸素が不足すると、めまいや立ちくらみ、頭が重い感じが出ることがあります。顔色が青白く見えたり、冷えやすさを自覚する方もいます。

こうした症状はそれぞれ単独では判断しにくいですが、腎機能低下とあわせて見たときに、貧血を疑う手がかりになります。

第5章 腎性貧血の診断に用いられる主な検査

5.1 ヘモグロビン値で貧血の有無を見る

腎性貧血の診断で中心になるのは血液検査です。特にヘモグロビン値は重要で、貧血の有無や程度を見る基本になります。ただし、1回の検査だけで判断するのではなく、前回と比べてどう変化しているかを見ることも大切です。ゆっくり低下している場合は、本人が気づきにくいことがあるからです。

5.2 鉄代謝の検査で背景を確認する

腎性貧血では、血清鉄、フェリチン、TSATなどの検査で鉄の状態を確認します。ここで見たいのは、「鉄が本当に不足しているのか」「体内にあっても使いにくいのか」という点です。

鉄が低いからすぐ鉄剤、という単純な話ではないのが腎性貧血の難しいところです。複数の指標を組み合わせて判断する必要があります。

5.3 腎機能検査とあわせて全体を見る

貧血の原因が本当に腎臓にあるのかを考えるには、クレアチニンやeGFRなどの腎機能検査も欠かせません。腎機能低下とヘモグロビン低下が並行していると、腎性貧血が疑われやすくなります。

一方で、腎機能の低下が軽いのに貧血が強い場合は、出血や栄養不足、別の血液疾患なども視野に入れる必要があります。

第6章 腎性貧血の主な治療方法

6.1 ESA製剤とHIF-PH阻害薬

腎性貧血では、EPOの働きを補う治療が基本になります。ESA製剤は注射でその働きを補う治療で、腎性貧血の中心的な治療の一つです。

HIF-PH阻害薬は、体内でEPOをつくる仕組みを活性化させる飲み薬です。新しい治療選択肢として使われることがあり、患者さんの状態に応じて選ばれます。

6.2 鉄補充療法

赤血球をつくるには鉄も必要です。鉄不足があれば、飲み薬や点滴で補充が行われます。

ただし、腎性貧血では「鉄があるのに使いにくい」こともあるため、検査結果を見ながら必要量を調整することが大切です。自己判断でサプリメントを増やすより、医療者の管理のもとで進める方が安心です。

6.3 漢方薬による補助的なアプローチ

西洋医学の治療が基本になる一方で、漢方は体調全体を整える補助として用いられることがあります。直接ヘモグロビン値を急に上げる治療ではなく、疲労感、めまい、食欲低下、冷え、むくみなど、貧血に伴うつらさを和らげながら、体の土台を整えていく考え方です。

特に、検査値だけでは表しにくい「なんとなくしんどい」「体力が戻らない」「食欲が落ちる」といった状態は、漢方が得意とする領域の一つです。

第7章 体質に合わせた漢方薬の考え方と処方例

漢方薬は「腎臓に良いもの」「貧血に効くもの」を選べばよいという単純なものではありません。同じ症状でも、その背景にある体の状態は人によって異なります。

たとえば、疲れやすさが目立つ人もいれば、冷えが強い人、食欲が落ちている人など、不調の出方には違いがあります。漢方では、その違いを見極めたうえで、体質に合わせて処方を組み立てていきます。

7.1 気虚タイプ|エネルギー不足で回復力が弱い

疲れやすい、だるさが抜けない、少し動いただけで消耗する、といった状態が続く場合は、体を支えるエネルギーが不足していると考えられます。回復する力そのものが弱っている状態です。

このような場合には、黄耆(おうぎ)や人参などを含む処方が検討されることがあります。体の基礎的な力を補うことで、全体の働きが安定しやすくなります。

7.2 陽虚タイプ|冷えが強く代謝が落ちている

手足が冷えやすい、体が温まりにくいといった状態は、体を温める力が弱くなっているサインです。冷えが続くと血流や代謝も低下し、老廃物がたまりやすくなります。

このタイプでは、附子(ぶし)や乾姜(かんきょう)などを用いて体を内側から温め、巡りを整えていきます。温めることで血流が改善し、体の働きが動きやすくなります。

7.3 陰血不足タイプ|栄養や潤いが不足している

めまいや立ちくらみ、肌の乾燥、疲れが抜けにくいといった状態では、体を支える血や潤いが不足していることがあります。

この場合、熟地黄(じゅくじおう)や当帰(とうき)などを含む処方が検討されることがあります。内側から満たしていくことで、体のバランスが整いやすくなります。

7.4 「補う」と「取り除く」を組み合わせることが重要

漢方では、足りないものを補うだけでなく、体にとって不要なものを取り除く視点も大切にします。むくみがある場合は余分な水分を排出する、血流が滞っている場合は巡りを整えるといったように、状態に応じてアプローチを組み合わせていきます。

補うことだけに偏ると、かえってバランスが崩れることもあります。体の巡りを整えながら補うことで、全体の調和が取りやすくなります。

第8章 補腎に使われる代表的な生薬とは

8.1 腎を支える代表生薬(冬虫夏草・山薬など)

漢方では、腎の働きを支えることを「補腎」といいます。腎は体の土台とされるため、この働きを整えることは、疲れやすさや回復力の低下を感じている方にとって重要な視点になります。

補腎に用いられる生薬としては、冬虫夏草(とうちゅうかそう)や連銭草(れんせんそう)、芡実(けんじつ)などがあります。これらは体の基盤を支える方向で用いられることがあり、体質に合わせた処方の中で役割を果たします。

8.2 なぜ単体ではなく組み合わせるのか

漢方では、生薬を単体で使うことはほとんどありません。冷えが強いのか、むくみがあるのか、疲労が中心なのかによって、必要な組み合わせは変わります。

同じ「腎臓が気になる」「貧血がある」という状態でも、背景が異なれば整え方も変わります。そのため、「何を使うか」よりも「どう組み合わせるか」が重要になります。

第9章 腎臓病による貧血を悪化させない生活習慣

9.1 食事は鉄を増やすより全体のバランスが大切

貧血というと鉄を意識しがちですが、腎臓病がある場合は、鉄だけ増やせばよいとは限りません。たんぱく質、塩分、カリウム、リンなどとの兼ね合いもあるため、全体のバランスが大切になります。自己判断で特定の食品だけを増やすより、腎機能の状態に合わせて整えることが大切です。

9.2 定期的な検査で変化を早くつかむ

腎臓病も腎性貧血も、ゆっくり進むことが多い病気です。体調だけでは変化に気づきにくいため、定期的な検査で数値の変化を追うことが大切です。数値が少しずつ悪化している場合でも、早めに気づけば対策の選択肢が増えます。

9.3 睡眠・体力・服薬管理も大切

十分な睡眠、無理のない運動、薬の飲み忘れ防止など、日常の積み重ねも体調に影響します。過度に頑張るより、続けやすい形で整えていくことが大切です。

慢性の病気では「続けられること」が何より重要です。生活を極端に変えるより、無理なく維持できる工夫が役立ちます。

まとめ 腎臓と貧血は体全体で考える

腎臓が悪くなると貧血が起こりやすくなるのは、赤血球をつくるホルモンであるEPOが不足しやすくなるためです。そこに鉄不足や炎症、栄養状態の低下などが重なることで、貧血は進みやすくなります。

疲れやすさや息切れ、めまいなどの変化が続くときは、年齢や体力の問題と決めつけず、腎機能と貧血の両方を意識することが大切です。

西洋医学では、ESA製剤やHIF-PH阻害薬、鉄補充療法などが基本になります。一方で漢方では、五臓や気血水のバランスから体全体を見直し、補腎の視点も含めながら体調を整えていきます。数値だけで終わらせず、体の状態を丁寧に見直すことが、これからの健康につながります。

腎臓の健康を漢方でサポートする誠心堂薬局

腎臓の不調と貧血が重なって気になる方は、早めに体全体の状態を見直すことが大切です。 誠心堂薬局では、慢性腎臓病の相談に対応し、体質や不調に合わせた漢方のご提案を行っています。
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📅 公開日: 2026/04/24

🔄 最終更新日: 2026/04/03

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