中医不妊治療Q&A

西野先生に聞いてみましょう

これから妊娠準備をはじめる方も、今まさに妊活中の方にも、中医学の漢方と鍼灸のことをもっと知ってもらいたいのです。妊娠するための基本知識や妊娠しやすい身体づくりのこと。不妊症ってどういうことなの?35歳すぎても妊娠できるの?まずは中医学の視点からの不妊症を見ていきましょう。子宝を望むすべての方の疑問に中医学のスペシャリストがお答えします。



不妊症ってどういうことですか?
不妊症治療は大変ですか?

西野:「目標期間とその治療法を決めるから妊活中の不安は消えます」
不妊治療は出口の見えないトンネルのよう。先が見えないことに不安を抱く人が多いから大変と思うのではないでしょうか。その不安は「いつ妊娠するのか見通しがつかない」ことにあるのだと思います。いつまで治療するのかわからなければ、経済的な不安もあるでしょう。晩婚となればタイムリミットに対する不安と焦りもあるでしょう。目標はみなさん同じ「妊娠して無事出産する」ことです。誠心堂では30年間の妊活データを基にその人ごとの「いつまでに何をどうすればいいのか」という期間と方法を示すことで、妊活中の不安を取り除いていきます。

不妊の原因は十人十色です。身体的な問題点を診ていくのはもちろんですが、「メンタルはどのような状態か」「どのような食生活なのか」「運動はしているか」「生活習慣はどうか」など、それぞれの関係性を細かく探りながら問題点を正していきます。病院では聞かれないような質問をするのは、不妊は機能の問題だけではなく、その機能をとりまくすべての状態を考慮しながら治療方針を考えていくからです。

治療方針が決まればあとは期間です。この治療をどれくらい続けたら良い結果がでるのか。それは年齢によって違ってきます。誠心堂の30年間の実績データでは平均して、30代前半が6か月、後半は1年くらい、40代になると1年から1年6か月ほどです。もちろん、これはあくまでも平均値なので、期間は個々で変わってきます。提示された治療期間は心身を整え、妊娠・出産・育児を乗り越える体力を作ることに専念します。ですから「本当にこれで大丈夫?」「もっと効果がある治療法があるのでは」などと、迷ってほしくないのです。信じて続ければ体の血流が変化し「体がポカポカする」「疲れない」「よく眠れる」など自覚症状が必ず現れてくるからです。妊娠してもおなかの中で赤ちゃんがスクスク育たなければ元も子もありません。さらに出産という大仕事を乗り越え、健康的なメンタルで育児を行わなければならいのです。

おどかすつもりで、このようなことをお話しているのではないのですよ。妊活は序の口、まだまだ先は長いのです。そのためにもしっかり妊活で体の底上げをしておく必要があるのです。体調が良くなれば「大丈夫!私やっていける」と、自然と前向きな気持になるものです。そんな患者さんを今までたくさん見てきましたから。
誠心堂はあなたの妊活に対する不安をすべて取り除き、安心して妊娠、出産、育児が行えるお手伝いをしていきます。

妊活で漢方薬はどんな働きをするの?

西野:「妊孕力のある体になるための底上げをしてくれます」
妊活において漢方薬は大きく分けて、2つの働きをします。1つ目は子宮内の血流を良くする、血液から届いた栄養を必要な部分に行き渡らせて、月経周期の活性化を行います。具体的に説明すると、月経期には子宮内膜をきれいにして、主席卵胞(選別された優秀な1つの卵胞)を元気にする。卵胞期には子宮内膜を厚くして着床の準備をする。卵胞を成熟化する。黄体期はさらに着床しやすい子宮にする。自律神経を安定させる。このように月経の周期に合った調整をしていくのが妊活における漢方薬の役割です。これがQ5にでてくる「周期調節法」の治療へとつながっていくのです。もちろん調整するのは子宮や卵巣だけではなく体全体ですから、内臓の調整も漢方薬で行います。2つ目はアンチエイジング、つまり老化を遅くする働きです。妊活においてのアンチエイジングとは若返りというより、妊孕力の低下を抑えることです。元気な卵子、元気な子宮、元気な精子が作れる力を弱くしないことです。

中医学の文献『黄帝内経(こうていだいけい)』には、「女性は7の倍数」「男性は8の倍数」の年齢の時に節目を迎え、体に変化が訪れるという記述があります。これに基づくと、女性は28歳、男性は32歳が最も体が充実し、そこからは少しずつ衰えが始まっていくのです。
この老化と密接な関係にあるのが中医学で言うところの「腎」です。女性なら28歳、男性は32歳以降、腎の中の腎精という物質が不足してくるのです。これが不足することで妊孕力は低下します。その不足分を補うのが漢方薬なのです。とくに有効なのが動物性の漢方薬です。

晩婚化が進む昨今。男女ともに妊娠に適している年齢を超えた結婚は珍しくありません。大学を卒業して就職し、納得がいくまで仕事に打ち込んだら、30後半になっていた……。よくある話です。でも、結婚もしたいし子どもだってほしい。年齢だけで妊娠を諦めたくはないですよね。そのためにも、漢方薬で卵子、精子が老化を進行させない予防を早いうちから心がけてほしいのです。妊娠前から準備しておけば、いざ、子どもを望んだときも慌てなくて済みますから。

中医学の不妊治療で欠かせないことは?

西野:「生殖能力と最も深い関わりがある「腎」の働きを高めることです」
西洋医学と中医学の不妊治療では考え方が根本的に違います。その中で最も特徴的なのが、中医学では生殖機能は「腎」にコトントロールされると考えていることです。
「腎」といえば、体液から不要な物質を膀胱へ運んで、尿として排泄する腎臓を思い浮かべるでしょうが、中医学ではその機能以外に、生殖や成長・老化・ホルモンの分泌や免疫全般などをつかさどるとされています。ですから妊娠に関しても、「腎」の働きが左右すると考えるのです。

中医学では生殖能力と最も深い関わりがある腎に蓄えられた「腎精」が尽きると生命も尽きると考えます。つまり「老化」は腎の状態次第ということになるのです。もともと遺伝で腎のエネルギーが不足している先天的なことや、日常生活の不摂生や加齢などの後天的なことから腎の機能が低下すると、不妊傾向になるようです。
そこで「腎」の働きが思わしくない人には「補腎」によって働きを高めることが必要になるのです。補腎は性ホルモンの分泌を高め、高度治療で乱れたホルモンバランスの回復や妊娠力を保ちます。補腎の働きを充実させるには植物性の漢方薬だけでは足りないこともあるので、動物性の漢方薬も使います。とくに動物性の漢方薬はホルモン分泌に関わり、性腺の働きを高めます。

中医学には「補腎薬」が数多くありますから、30代はもちろん、40代以降の方でも腎年齢を実年齢よりも若く維持、再生できるため、より元気な卵子や精子が作られることが期待できます。これは2018年7月に開催された「日本受精着床学会総会」で医学的に証明されたことが発表されました。とはいっても「補腎薬」は魔法の薬ではありません。とくに女性の卵子細胞の数は生まれた時点ですでに決まっています。それが初経の頃から原始細胞が活発化して、約190日かかって排卵するのです。元気な卵子が育つ体内環境が整うのも、最低6か月はかかると考えてください。

周期調節法ってどんな不妊治療法なの?

西野:「月経周期に合わせて漢方薬や鍼治療の方法を変える治療法です」

初経から閉経まで毎月繰り返される月経には4つの周期があり、その周期に合った漢方薬の服用や鍼灸治療で、女性の体のリズムを整え妊娠しやすい体作りをするのが「周期調節法」です。
何故、4つの周期で漢方薬を変えるかといえば、周期によって女性ホルモンの分泌が異なり、体調も変化するからです。この周期に合わせて漢方薬を飲み分けることで、妊活に向けた細かな体質改善が可能になり、自然妊娠も望めるのです。では、その4期の周期の特徴をそれぞれ挙げてみましょう。

 

dot 月経期 理気活血で排泄をスムーズに(月経が始まった日を1日目とした3〜7日間)

赤ちゃんが宿る子宮をきれいに掃除する時期。不要になった子宮内膜を剥がし、溶かして月経血として完全に体外に排出します。血行を促進する理気活血作用のある漢方薬や活血のツボを刺激して血行を良くし、無理なくスムーズに月経血を排出させ、子宮内をきれいにしましょう。

【代表的な漢方薬】
田七人参・丹参・赤芍・川芎・延胡索など
【代表的なツボ】
帰来(+灸)・血海・太衝・三陰交(+灸)など

 

dot 卵胞期(低温期) 滋陰補血で栄養供給量を増やす(月経期後の約7日間)

卵巣内では1個の卵胞を熟成させ、子宮内膜の新しい粘膜層を再生・増殖させる時期。質のいい卵を育てながら、子宮では卵を迎える丈夫なベッドを作ります。滋陰補血作用のある漢方薬や補血のツボの刺激によって子宮と卵巣への栄養素やホルモンを供給し、子宮内膜の回復と質の良い卵胞の成熟を助けます。

【代表的な漢方薬】
枸杞子・地黄・当帰・芍薬・女貞子・旱蓮草など
【代表的なツボ】
足三里・復溜・湧泉(灸のみ)・子宮(+灸)

 

dot 排卵期 理気活血で速やかに高温期へ移行(卵胞期後の3〜7日間、または黄体期の中間まで)

卵巣内の成熟卵胞から卵子を排卵し、黄体を作り、卵胞期から黄体期へ移行させる時期。赤ちゃんの卵を迎え、子宮を温めて着床の準備をします。再び理気活血作用のある漢方薬や理気のツボを用いて、ホルモン分泌の連携をよくして、確実にかつ速やかに排卵、黄体化へつなげます。

【代表的な漢方薬】
柴胡・川芎・香附子・丹参・牛膝など
【代表的なツボ】
血海・間使・三陰交(+灸)・子宮(+灸)

 

dot 黄体期(高温期) 温補腎陽で受精卵を着床させる(黄体期の約2週間)

子宮内膜の活性化した分泌腺の働きにより、栄養素に富んだ分泌液を子宮内に蓄え、受精卵が着床しやすい環境を整える時期。やわらかで温かく、栄養も豊富にあふれる、快適な子宮で赤ちゃんを育てていきます。温補腎陽作用のある漢方薬や補腎のツボで、安定した高温期を維持し、受精卵の着床・発育を助けます。

【代表的な漢方薬】
肉蓯蓉・莵絲子・鹿茸・淫羊霍・杜仲・続断など
【代表的なツボ】
太渓(+灸)・足三里・腎兪(+灸)・子宮(+灸)

自然妊娠はもちろん、体外受精の成功率、受精卵の着床率も高められる周期調節法は西洋医学の治療と併用するのもおすすめですが、それには基礎体温のパターンが正常であることです。まずはあなたの基礎体温のタイプを見つけましょう。その上で中医学の専門家に相談して、正常型の基礎体温になる適切な対処を施すことが大切です。

誠心堂式「三焦調整法」はどんな効果?

「卵巣や子宮の血流を良くして、機能回復や漢方薬の効果を上げます」
Q4でお話したように、中医学の妊活では漢方の補腎薬を服用します。何故かと言うと、女性の卵巣機能は、生殖器やホルモンをつかさどる、「腎」にコントロールされていると考えるからです。一般の漢方薬だけでなく動物性生薬を組み合わせた補腎薬は、卵巣機能の働きを高め、卵巣年齢を若く維持することができるので、元気な卵子を作るために有効なのです。また、これらの補腎薬をQ5で取り上げた「周期調節法」で服用すれば、妊娠する確率はさらに高くなります。

しかし、補腎薬も周期調節法も血液の流れが滞りなく全身を巡っていることによって効果が期待できるのです。つまり、いくら的確な漢方薬を最適な時期に服用しても、血液の流れに滞りがあれば、届いてほしい臓器に漢方薬が十分に届かない可能性があるのです。
私達の日常は無意識なストレス、夜更かし、PCやスマートフォンなどでブルーライトを長時間浴びるなど、交感神経を緊張させ、血液が頭部に集中していることが多いのです。体の血液量は一定ですから、血液が頭部に集まると、子宮・卵巣・精巣への血流が相対的に減ってしまいます。

何故、このような部位の血流が減るのかというと、極端な言い方ですが、子宮や卵巣は脳や心臓などに比べると、生命維持にはさほど重要ではないからです。このような血流が低下している状態では、いくら補腎薬や周期調節法を用いても、本来の効果が望めないケースが多いのです。

そこでお勧めしたいのが、誠心堂の「三焦調整法」です。「三焦調整法」とは、このような血液の滞りを鍼灸で調整する治療法です。「三焦」とは、頭からみぞおちまでの「上焦(じょうしょう)」、みぞおちからへそまでの「中焦(ちゅうしょう)」、へそから足先の「下焦(かしょう)」、の3つのことです。どの部位も血液が不足してはならないのですが、不妊の方は子宮・卵巣・精巣のある「下焦」に血液が不足しがち。

この調節法で血液の偏りや滞りをなくし、体全体に血液を分布させ、卵巣・子宮や精巣の血流を良くして、機能回復はもちろん、漢方薬の効果を上げていきます。施術を受けた方のほとんどが「お腹が温かくなった」と驚くのは、下焦の血流の滞りが改善された証です。この治療法の導入をすることで、今まで卵が育たなかった40代女性でも効果がでるようになってきました。冷えの自覚があるなら、三焦のどこかに血液の偏りがあるのかもしれませんよ。

※「誠心堂式三焦調整法」認定元:中国漢方普及協会

卵子の老化は加齢のせい?

西野:「加齢とともに卵子の数が減り、卵子自体も老化します」
「毎月生理が来ているから、まだまだ卵子だってあるはず」、「生理の状態が変わっていないから、卵子だって大丈夫……」などと安心している方も多いのではないでしょうか。しかし、残念なことに卵子も加齢とともに老化するのです。
では、卵子は老化するとは、どのようなことでしょう。お肌や体型のように、卵子も加齢とともに変化するのでしょうか?

答えの大前提として、知ってほしいのは、卵子は女性の体でつねに作り続けられるわけではなく、「原始卵胞」という卵子の元になるものが、生まれた時にはすでに卵巣の中にあることです。つまり、原始卵胞は自分の年齢と同じだけ年を重ねていきます。20歳の時の卵子は20年間、30歳の時のは30年間たった卵子だということです。見た目がどんなに若くても、卵子の年齢はその人と同じ年齢なのです。

また、生まれたときからある「原始卵胞」ですから、その数も決まっています。卵原細胞は母親の体内にいる間に増殖を終了して、出生以前に卵子への変化(分化)が始まり、途中で休止した状態で思春期を迎えます。その後、そのごく一部(一生の間に 約400~500個)が成熟して排卵されます。排卵される卵は選りすぐりの超エリートですが、年齢とともに卵子の数は減っていくだけで、あとから増えることはないのです。

みなさんは虚血再灌流(きょけつさいかんりゅう)をご存知ですか?血流は流れが良い時と悪い時があります。この間隔が短ければ短い程、活性酸素が発生しやすくなり卵子や精子の老化が進みやすくなるのです。特に夜スマホや運動、ストレスをかける生活をする人程、老化が早まります。

精子も加齢で老化するの?

「35歳を過ぎると受精卵の細胞分裂を促す精子の力が衰えます」
卵子の源となる原始卵胞は数が増えないため、使い切ってしまうと卵子をつくることはできません。一方、男性の精子は何歳になってもつくることができます。そのためでしょうか。不妊の原因の多くは女性側にあると以前は考えられてきました。しかし、不妊の研究が進むにつれ、不妊の原因の半数は男性側にあるし、男性も女性と同じように、加齢によって精子の質が悪くなることが明らかになりました。また、獨協大学の岡田弘教授の最新の研究では、35歳を過ぎると受精卵の細胞分裂を促す精子の妊孕力(妊娠できる力)が衰えていく人たちが存在することが発表されたのです。

中医学では「女性は7の倍数、男性は8の倍数」で体が変化し、女性は21歳から28歳、男性は24歳から32歳がもっとも精巣機能が強いと言われていますから、「35歳を過ぎると」という研究発表の年齢もうなずけます。実際、日本生殖医学会によると、30歳代の精子と 50歳代の精子を比較したところ、精液量は3~22%、精子運動率は3~37%、精子正常形態率は4~18%低下すると報告されています。

また、男性でも35歳を過ぎると生殖補助医療による出産率が低下する、男性の加齢の影響で自然流産の確率が上昇するという報告もあります。さらに、自然流産に与える影響は男性の 40歳以上は女性の30歳以上に相当するという報告もあるのです。

精子の老化(質の低下)は加齢だけではなく、生活環境によるものも少なくありません。精巣は卵巣と同じように血管から栄養分が補給されています。しかし精巣動脈は直径1ミリほどのとても細いものなんです。ですからちょっとしたことで血流が悪くなりやすい、つまり精巣に影響が出やすいのです。

長時間座ったままのデスクワーク、PCなどから出ている電磁波、ストレスによる活性酸素などから血流が偏ったり、悪くなっている男性が増えている。このことから精巣に血液が滞り、結果精子の質が悪くなっている男性が多いと考えられます。これが原因で若い男性でも精子の数や運動率が下がっていることがあるのです。

子宮は老化するの?

西野:「加齢、疾患、不摂生などで子宮は老化します」
妊活中の方にとって、「子宮も老化する」と言われると、とても落ち込んでしまいますよね。しかし、残念ながら、さまざまな理由で女性機能も老化が進んでしまいます。

とくに、子宮の老化が進んでしまうと、着床する確率が低下してしまい、不妊の原因となり、せっかく宿った命が流産したり、妊娠30週前後の早産の確率が高くなったりしてしまいます。妊娠の確率は、20代~30代前半までが25~30%ですが、年齢が上がるたびに妊娠率は低下していきます。40代ですと妊娠率は5%以下といわれています。

ただし子宮の老化が進んでしまう原因は加齢だけではありません。子宮筋腫・子宮内膜症など婦人科系の病気で子宮が老化することがあります。さらに加齢やストレスとともに、子宮筋腫、子宮内膜症などに罹患する確率が増します。

子宮筋腫があると骨盤内で瘀血(汚れた血)が溜まり本来の血液が持つ止血作用を低下して、月経の出血量が多くなるなどで、体は貧血状態になります。これでは元気な内膜ができず、受精卵が着床しづらくなります。子宮内膜症の原因も「瘀血」が考えられます。これらも子宮の老化や炎症を進行させるので、適切な治療が不可欠です。
さらに薄着や素足で体を冷やしたり、嗜好品、添加物の多いものの摂取、過度なストレスを感じる生活を続けるなども子宮の血流が下がり老化が早まります。

女性は、30歳以降妊娠率が低下します。35歳前後からは、妊娠率の低下と流産率の増加が起こり、たとえ体外受精や顕微授精などの生殖補助医療を行って受精を起こさせることができても、妊娠率・生産率は低下します。

中医学では女性の子宮も「腎」にコントロールされていると考えます。加齢とともに「腎」の働きが弱くなっていくと、骨盤内の血流が徐々に低下して、子宮も老化し、どうしても不妊傾向になってしまうのです。腎の老化を予防するためにも、子宮のある骨盤内に十分な血流を増やすことが大切です。

元気な卵子を作ることはできるの?

西野:「補腎とは卵巣の機能を改善して元気な卵子を作ることです」
Q4でも触れましたが、「腎」とは西洋医学の腎臓とは異なります。つまり、生殖能力と最も深い関わりがあるのは、中医学でいうところの「腎」です。子宮・卵巣といった生殖器の働き、ホルモンバランスなど、妊活には欠かせない機能は、すべて腎によってコントロールされています。

腎の中には「腎陰」と「腎陽」の2つがあり、陰は物質的なもの、つまり卵胞の発育に必要な栄養や潤い、子宮内の血液や粘 液、女性ホルモンなどにあたります。一方で陽は子宮・卵巣の機能や温める力と考えます。ですから中医学の不妊治療では腎陰・腎陽の バランスをとりながら、腎の力を補う「補腎」が重要になってくるのです。

女性の場合、35歳を過ぎると「腎」の働きが悪くなっていきます。そうなればどうしても卵子も元気がなくなります。これは自然の摂理でもあるのですが、妊娠を望むなら元気な卵子をなるべく維持しなければなりません。そのためにも「補腎」は不可欠なのです。

西洋医学の不妊治療で行われる「採卵」は卵巣に大きなダメージを与えます。ですから、採卵をする人ほど「補腎」をしっかりおこなってほしいのです。 採卵は普通の排卵と違って卵巣に大きな負担がかかります。それは中医学的に言うと「精」の負担になります。精が弱くなれば腎も、とうぜん弱くなってしまいます。

よく体力を回復するために「安静」にすると言いますが、採卵のような大きなダメージを受けた場合は、ただ寝ているだけの「安静」では十分とは言えません。ましてや、35歳を越して、機能低下している人は真剣に考えるべきでしょう。 採卵で弱った卵巣のままでは次の採卵でも元気な卵子を期待することはできないのです。採卵が1回で終わればいいのですが、不妊症の人は腎も弱い人がほとんどなので、もともと元気な卵子がなく、そのため何度も採卵するケースが多いのです。

不妊治療をしている人ほど、採卵をしたあとは卵巣を早く回復させる必要があるのです。採卵のあと、基礎体温が乱れる人が多いのですが、それは中医学では「腎精」が弱っているのが原因と考えます。この状態で採卵を続けても、元気な卵子は期待できません。それどころか、せっかくある卵が採卵によって取れなくなる可能性もあるのです。そうならないためにも、採卵をしたらすぐに「補腎」して、元気な卵子をつくる基盤を固めましょう。

精子を元気にすることはできるの?

西野:「精子は数よりも質が重要です」
精子は卵子とは違って、常に作られているといっても、精巣の働きを左右する「腎」が加齢とともに弱くなり、精子の質が低下します。ですから妊活中の男性にも「腎」を若々しく保つことをおすすめします。
とはいっても、それだけでは万全とはいえません。より効果を上げるために、日常で気をつけたいことがあります。

まずは毎日の食事ですが、暴飲暴食や不規則な食事は避けます。ビタミンC、D、E、亜鉛、カルシウムを十分摂る、バランスのいいメニューを摂るように心がけましょう。きつめのブリーフやジーンズ、長時間バイクや自転車にのるなどで、下半身を圧迫しないようにします。血液の循環が悪くなり、精子の発育を阻害する恐れがあります。

また、精巣は熱にとても弱いのです。日本人の平均体温は37度前後ですが、精巣の理想は35度。わずか2度で精子の形成は大きく変わるのです。肌に密着するブリーフだと熱がこもりやすくなります。もちろん、40℃以上の湯船に長く浸かったり、サウナ、熱を発するノートパソコンを膝の上にのせるのも精巣の機能を悪化させます。

喫煙は血管を収縮させ血流を悪くするのでEDを引き起こす可能性がありますし、精子の数、運動量ともに減少し、奇形精子の量が増え、受精能力の低下につながります。大量のアルコールやカフェインの摂取もNGです。
過度の運動によって活性酸素で体を酸化し過ぎると、精子にダメージを与えてしまいます。精子は酸化ストレスによるダメージを受けやすいのです。

現代人はストレスにさらされた毎日を送っています。メンタルが強い人でも知らず知らずのうちにストレスが溜まっていることは少なくありません。そのせいでしょうか、夫婦生活の回数が少ないカップルが多いようです。妊活中なのに夫婦生活が月に1回という夫婦もいます。
また、妊活男子にとって、腰痛は厳禁です。ギックリ腰や腰椎ヘルニアだけではなく、慢性の腰重感を持っている男性は早めに改善してください。中医学では「腰は腎の府」と言われ、精力や精子の質と密接な関係があります。

タイミング以外でも夫婦生活が持てる関係になるために、体調管理を怠らないことです。妊活中の夫婦生活は月に8〜10回は最低必要。週に2回以上の夫婦生活は基本です。できたら排卵の5日くらい前からは1日おきくらいの回数が理想です。精子は数も大切ですが、精子の質はもっと重要です。

子宮を元気にするには?

西野:「腰のツボが子宮を元気にします」
妊娠の確率が低下し、せっかく宿った命でも流産したり、先天異常の確率が高くなったりする子宮の老化。元気な子宮は子宮内膜がフカフカで弾力があり、受精卵がしっかり着床します。老化した子宮は子宮内膜が薄くて弾力がなく、萎縮していきます。これではせっかく受精卵となっても着床できない確率は高くなってしまいます。

そうならないためには、骨盤内血流をよくしておく必要があります。まずは交感神経が活発になり脳が充血した状態から、副交感神経が優位になるようにスイッチして脳のうっ血をとり、下焦(下半身)の血流を回復させて骨盤内血流をよくします。脳のうっ血をとるツボは襟足にある風池、天柱さらに耳の後ろにある完骨、翳風(えいふう)などです。これらのツボを指で押してください。

また、骨盤内血流、とくに子宮の血流を回復させるのは委中、承筋、承山という脚の後ろ側の静脈にあるツボです。静脈の流れが悪い人は、足首、膝の裏、脚の内側がむくんでいることが往々にしてみられます。骨盤の血流が悪い人は静脈の流れも悪いのです。足の内側にある、陰陵泉、三陰交、太谿とうツボを手で抑えるだけでも効果があります。
交感神経が優位のときは横隔膜の緊張が強くおなかも固くなっています。とうぜん呼吸は浅くなっています。その緊張をほぐして深い呼吸を促すのは、内側の手首にある内関や外側の手首にある外関のツボを刺激します。

ツボの刺激に加えて、ストレッチ用のポールに仰向けに寝て、ゆっくり呼吸をするのもおすすめです。胸や肩、太ももなどの筋肉の緊張を無理なくほぐすことができます。また、背骨が本体の正しい状態にリセットされます。さらに副交感神経も優位な状態になる腰のツボがあります。仙骨にある①上髎(じょうりょう)、②次髎(じりょう)、③中髎(ちゅうりょう)は仙骨神経(副交感神経)を刺激するツボで子宮や卵巣の血流を増やし、子宮や卵巣を元気にしてくれる大切なツボです。

もちろん、誠心堂の三焦調整法で血流の偏りを無くすことも忘れずに(詳しくはQ6を参照)。

不妊症を引き起こす病気って?

西野:「30才前後の若い女性に多いのが「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」です」
不妊症を引き起こす病気はいろいろあるのですが、ここではとくに気になるものを紹介します。
注目したいのは30才前後の若い女性に多い「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」です。

卵巣の表面の白膜が肥厚して硬いため排卵が困難になったり、ホルモンバランスの乱れで卵胞がそのまま卵巣内に残りどんどん滞留(多嚢胞化)してしまいます。これが「多嚢胞性卵巣(PCO)」という状態です。エコー(超音波検査)で見ると、卵巣の表面に沿って卵胞が数珠(じゅず)つなぎに並んで見えます(ネックレスサイン)。多嚢胞性卵巣(PCO)になると月経異常や不妊などが多くなり、排卵障害や着床障害を引き起こすとされています。

PCOSの人は黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)のバランスが悪く、とくにLHの値が高くなります。
排卵がうまく行われないために生理周期が延長したり、ときには無月経になったりします。排卵しなければ、自然に妊娠することはありませんので、不妊症になります。PCOSは、排卵障害のひとつで、卵巣に送られてくる栄養を多数の卵胞で吸収するので、卵の質がよくないともいわれています。

中医学ではこのような未熟な卵胞を成熟させるのが得意です。PCOSは卵巣の周りに瘀血や痰湿がこびり付き、白膜が厚くなった病態と考えます。軽度の場合と重度の場合では対応が異なりますが、軽度の場合は活血薬、化痰薬を服用すると卵巣が柔らかくなり、排卵がスムーズになります。 ぜひ排卵が乱れやすい人は漢方薬局で相談してください。


授かるための身体を育みましょう。
身体を育むことは、命を育むことです。

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妊娠と健やかな赤ちゃんの誕生を願うなら、まずは体質改善とカラダづくりから。
「卵子も老化する」「年齢が若くても、卵子が残り少ないこともある」ということが広く知れ渡ってきた昨今、「少しでも早く妊娠したい」と焦り、ストレスをかかえる女性も少なくありません。でも、「赤ちゃんを望むなら、まず体づくりを」と私共もは勧めております。
自分の体質に合ったカラダ作りと適切な養生をしましょう。
卵子と精子が受精しても、きちんと子宮に着床しなければ、妊娠できませんし、順調に育っていかなければ、出産できません。35才以上になると、染色体異常が主な原因の妊娠12週未満の流産がふえるだけでなく、それ以降の時期の流産率も高くなります。赤ちゃんを望む多くの方へのサポートを通して、健康な体をつくることが、妊娠しやすく、おなかの赤ちゃんが育ちやすく、子育てもしやすいことにつながると実感しています。

カラダ作りでもっとも重要なのは、体質を見極めることです。中医学では、『養生』といって、健康な体をつくるために日常生活の中で足りないものを補いますが、人によって体質が違うため、それに合わせた養生をすることが大切です。西洋医学とは異なり、体質は舌や脈で判断するので、まずは必ず中医学の専門家にみてもらいましょう。
妊娠の鍵は、ホルモン分泌の促進と骨盤内の血流アップです。
妊娠に近づくためには、体質に合った養生をするだけでなく、さらに2つのことが大切になります。

1つは『補腎(ほじん)』です。補腎とは、妊娠する力を落とさないようにすること。妊娠するためには排卵や着床を促す女性ホルモンがきちんと分泌されていなければなりませんが、年齢を重ねるとホルモンの分泌が落ち、妊娠する力が弱くなってきます。そこで、補腎薬を使ってサポートするのです。補腎には鹿茸(ろくじょう)、亀板(きばん)という動物性の生薬を組み合わせた「亀鹿二仙丸(きろくにせんがん)」という処方があります。体を温めてホルモンの分泌を助ける以外に、卵に必要な潤いや栄養を与えるため、究極のアンチエイジングの漢方といわれているそうです。

もう1つは『骨盤内の血流の改善・安定』です。骨盤内の血流を良くすると、分泌を促したホルモンがきちんと子宮や卵巣、卵胞に届くようになって、卵の質が良くなり、着床しやすくなります。この二つはどちらも、男性不妊の方にもおすすめできます。血流の改善には、誠心堂オリジナルメソッドである鍼灸による『三焦調整法(さんしょうちょうせいほう)』で体全体の血流バランスを調整し、本来の血流に戻して安定させるとともに、体質別に漢方薬を選んでいます。
不妊症で悩む方に伝えたいことは?
「妊娠・出産・子育て」は、ひとつながりで、切り離すことはできません。誠心堂では、この期間を母子ともに健やかに過ごせるよう、中医学でサポートしています。ぜひ一度ご相談ください。


株式会社誠心堂薬局 代表取締役
西野 裕一