漢方薬辞典-た行

 

大黄甘草湯 だいおうかんぞうとう

効能効果

便秘

配合生薬

大黄(ダイオウ)、甘草(カンゾウ)

出典

《金匱要略》に「食しおわって後吐するものは,大黄甘草湯を主る」とある。

方意と構成

便秘と嘔吐に用いられる。便を出して胃気を降ろし,消化不良で胃がふさがったものを解消して嘔吐を止める方意で、現在では常習便秘にはば広く使用されている。

大黄には瀉下(便を下す)作用があり、甘草が大黄の効力を緩和し脾胃(胃腸)を守る働きがある。

(管理No.02-131)

 

大黄牡丹皮湯 だいおうぼたんぴとう

効能効果

月経不順、月経困難、月経痛、便秘、痔疾

配合生薬

大黄(ダイオウ)、牡丹皮(ボタンピ)、桃仁(トウニン)、芒硝(ボウショウ)、冬瓜子(トウガシ)

出典

《金匱要略》に「腸癰(消化管の炎症性疾患で),小腹腫痞し(下腹部が腫れて抵抗を触れ),之を按ずれば則ち淋のごとく痛み(圧すると膀胱炎のような痛みがあり),小便自調し(小便は普通で),時々発熱し,自ずと汗出で,復た悪寒し,その脈遅緊なるは,膿いまだ成らず,これを下すべし(脈が遅緊なら化膿が進んでいないから下すべきである),まさに血あるべし(血便もあるだろう),脉洪数なるは、膿すでに成る、下すべからざるなり(脈が洪数である場合は化膿が進んでいるから下すべきではない),大黄牡丹皮湯之を主る(下すべきときは大黄牡丹皮湯の主治である)」とある。

方意と構成

欝結した熱毒と気血の停滞を取り除き、癰腫(化膿性の炎症)を瀉す。虫垂炎の初期で、まだ化膿性炎症が進んでいない時期に良い。腸の炎症性疾患の他、肛門周囲炎、痔瘻、子宮内膜炎、尿道炎、皮膚疾患などに応用される。

主薬は大黄で、腸中の熱毒を便で下すとともに血流改善に働き、芒硝がこれを補佐する。牡丹皮・桃仁は滞りを散じ、冬瓜仁は抗炎症と排膿(膿を出す)に働く。

(管理No.02-132)

 

大建中湯 だいけんちゅうとう

効能効果

下腹部痛、体腹部膨満感

配合生薬

山椒(サンショウ)、人参(ニンジン)、乾姜(カンキョウ)、膠飴(コウイ)

出典

《金匱要略》に「心胸中大いに寒え痛み(胸中が大いに冷えて痛み),嘔して飲食することあたわず(吐き気がして食事ができず),腹中寒え,上衝し皮おこり,出で見れ頭足ありて上下し,痛みて触れ近づくべからざるは(腹中が冷えて腹がむくむくと動いて、その動き方が頭と足があるように上下に動いて痛くて触れることができないものは),大建中湯これを主る」とある。

方意と構成

小建中湯の適応症よりさらに体が衰弱したものや、体内に冷えがあるものに用いる。

山椒が主薬で脾胃(胃腸)を温めて腸の蠕動運動を調整し、乾姜がこれを助ける。人参・膠飴は脾胃を補い、痙攣性の痛みをとる。

(管理No.02-133)

 

大柴胡湯 だいさいことう

効能効果

胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症

配合生薬

柴胡(サイコ)、半夏(ハンゲ)、生姜(ショウキョウ)、黄芩(オウゴン)、芍薬(シャクヤク)、大棗(タイソウ)、枳実(キジツ)、大黄(ダイオウ)

出典

《傷寒論》に「傷寒発熱し(急性熱性病で発熱し),汗出でて解せず(発汗させても治らず),心中痞鞭し(心下部に痞えがあり),嘔吐して下利(下痢)するものは,いまだ解せずとなすなり,大柴胡湯を与え,これを下せばすなわち癒ゆ」とある。

方意と構成

病が少陽の部位、すなわち半表半裏にあり、心下部が脹って痛む或いは硬く痞え、腹直筋の緊張があり、胸脇苦満の症状がつよい時に用いる。柴胡剤の中でも本方は症状が激しい場合や体力の充実した実証の人に適用する。

少陽の気機を通達する柴胡と、少陽における鬱した熱をとる黄芩により病邪を追い払う。半夏・生姜は胃気の上逆による悪心を抑え、枳実・大黄は便を出すことで胸の痞えを解消する。大棗・白芍は“甘味”と“酸味”の性味により津液(体液)を生み、熱による消耗から保護する。

(管理No.02-134)

 

大柴胡湯去大黄 だいさいことうきょだいおう

効能効果

胃炎、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛、神経症

配合生薬

柴胡(サイコ)、半夏(ハンゲ)、生姜(ショウキョウ)、黄芩(オウゴン)、芍薬(シャクヤク)、大棗(タイソウ)枳実(キジツ)

出典

《傷寒論》の大柴胡湯には大黄が記載されておらず、大柴胡湯去大黄はこれに相当する。

方意と構成

柴胡剤の中でも本方は症状が激しい場合や体力の充実した実証の人に用いる。大柴胡湯証で便秘がない場合に使用する。

(管理No.02-135)

 

大半夏湯 だいはんげとう

効能効果

嘔吐

配合生薬

半夏(ハンゲ)、人参(ニンジン)、蜂蜜

出典

《金匱要略》に「胃反(胃気による下に降ろす働きが失調して上逆する状態)にて嘔吐するは大半夏湯これを主る」,「嘔して心下痞鞭(心下部が痞える)するものを治す」とある。

方意と出典

朝食べたものを夕方に吐く、夜食べたものを朝に吐く、食べるとすぐに吐くなど、食事に関連して嘔吐する「反胃」の状態に有効である。

主薬である半夏により、胃気を下降させて飲食物を腸に移動させる。人参は胃の気を回復させ、蜂蜜は胃の液を補い便を軟化させる。蜂蜜は半夏の毒性・燥性を緩和し、滋潤して巡らせる働きにより胃気の下降を促進する。

(管理No.02-136)

 

沢瀉湯 たくしゃとう

効能効果

めまい、頭重

配合生薬

沢瀉(タクシャ)、白朮(ビャクジュツ)

出典

《金匱要略》に「心下有支飲(心下に痰飲がつかえて),其人苦冒眩(そのために頭に物をかぶったような感じがしてめまいするものに),本方主之(これを用いる)」とある。

方意と構成

五苓散や当帰芍薬散の原方である。沢瀉湯は沢瀉と朮の二味で構成されており、痰飲による症状がつよいときに用いられる。横になっていも、目をつぶっていても、ぐるぐる回る回転性のめまいに用いられる。

(管理No.02-137)

 

大黄附子湯 だいおうぶしとう

効能効果

腰痛、神経痛、便秘

配合生薬

大黄(ダイオウ)、炮附子(ホウブシ)、細辛(サイシン)

出典

《金匱要略》に「脇下偏痛し(脇下の痛み),発熱し,その脈緊弦,これ寒なり。温薬をもってこれを下せ,大黄附子湯によろし」とある。

方意と構成

温めながら邪実を下す“温下”の方意である。

体の内側と外側に冷えがあるもので、附子で内側、細辛で外側から体を温め、大黄が消化器内の停滞を排出し、腹痛を鎮めることができる。

(管理No.02-153)

 

大承気湯 だいじょうきとう

効能効果

常習便秘、急性便秘、高血圧、神経症、食当り

配合生薬

厚朴(コウボク)、枳実(キジツ)、大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)

出典

《傷寒論》に「陽明病(邪気が体内へと入り闘いが盛んで炎症が強い状態),譫言有潮熱(うわごと・熱があり),反不能食者(食事ができないものは),胃中必有燥五六枚也(胃の中に必ず5~6個の熱のために乾燥して硬くなった便がある),若能食者,但鞕耳(食事ができるものはただ便が硬いだけである),宜大承気湯下之(大承気湯で治すべし)」とある。

方意と構成

陽明腑実証(熱邪が腸胃にこもり乾燥して硬い便がある状態)に使用される。痞(胸腹部の痞え感・重圧感)・満(膨満感・抵抗)・燥(腸内の硬い糞塊・便秘・舌苔の乾燥)・実(腸内の糞便の停滞による腹部圧痛感)を解消する。

泄熱瀉下(熱を取り去り便を出す)の大黄が主薬で、芒硝が補助し、硬くなった便を軟化して排泄させることで熱結を除去する。厚朴・枳実は腸胃の気を巡らせて痞えや膨満感を除き、大黄・芒硝の瀉下作用をつよめる。

(管理No.02-154)

 

竹茹温胆湯 ちくじょうんたんとう

効能効果

かぜ、インフルエンザ、肺炎などの回復期に熱が長引いたり、また平熱になっても、気分がさっぱりせず、せきやたんが多くて安眠が出来ないもの

配合生薬

柴胡(サイコ)、竹茹(チクジョ)、茯苓(ブクリョウ)、麦門冬(バクモンドウ)、生姜(ショウキョウ)、半夏(ハンゲ)、香附子(コウブシ)、桔梗(キキョウ)、陳皮(チンピ)、枳実(キジツ)、黄連(オウレン)、甘草(カンゾウ)、人参(ニンジン)

出典

《万病回春》に「傷寒,日数過多にしてその熱退かず(急性熱性病にかかって日数が過ぎても熱が下がらず),心驚(驚きやすく),恍惚(ぼーっとして),煩躁して(じっとしていられず)痰多く,眠らざるものを治す」とある。

方意と構成

感冒が長引いて熱状がまだ残っており、咳がひどく、気分がさっぱりせず、よく眠れないものに用いる。気管支炎、肺炎、神経症、発作性心悸亢進などにも適用する。

「黄連温胆湯」に胆の気を通じさせる柴胡・香附子と、痰をとる桔梗を加え、炎症などによる気津両虚(気と体液の消耗)に対して人参・麦門冬を配合している。処方の構成は小柴胡湯と温胆湯との合方と解せられる。

(管理No.02-138)

 

竹葉石膏湯 ちくようせっこうとう

効能効果

からぜき、気管支炎、気管支ぜんそく、口渇、軽い熱中症

配合生薬

竹葉(チクヨウ)、石膏(セッコウ)、半夏(ハンゲ)、麦門冬(バクモンドウ)、人参(ニンジン)、甘草(カンゾウ)、粳米(コウベイ)

出典

《傷寒論》に「傷寒解して後(急性熱性病の後),虚羸(体が消耗して痩せてしまい),少気し(息切れし),気逆し吐せん(気が上逆し嘔吐)と欲するは,竹葉石膏湯これを主る」とある。

方意と構成

肺炎などの急性熱性疾患の回復期や気管支喘息、糖尿病や熱中症で口渇のあるものに用いられる。

“辛寒”の性味である竹葉・石膏が主薬で、気分にある邪熱(熱邪が体内へと入り闘いが盛んで炎症が強い状態)を取り去り、胸中の熱を冷ます。人参・炙甘草・麦門冬は消耗した気と体液を回復させ、半夏は吐き気や咳を止める。

(管理No.02-139)

 

治頭瘡一方 ちずそういっぽう

効能効果

湿疹、瘡(くさ)、乳幼児の湿疹

配合生薬

連翹(レンギョウ)、蒼朮(ソウジュツ)、川芎(センキュウ)、防風(ボウフウ)、忍冬(ニンドウ)、荊芥(ケイガイ)、甘草(カンゾウ)、紅花(コウカ)、大黄(ダイオウ)

出典

《勿誤薬室方函口訣》には「この方は頭瘡(頭部のできもの)のみならず,すべて上部顔面の発瘡(顔面の発疹)に用ゆ。清上防風湯は清熱を主とし,この方は解毒を主とするなり」とある。

方意と構成

本方は、血分に風・湿・熱毒の邪気が停滞した皮疹に広く使うことができ、慢性に経過する全身の掻痒・発赤・化膿・滲出・痂疲形成などに用いる。

風邪を取り去り痒みをとる荊芥・防風、余分な湿の停滞を取り去る蒼朮、清熱解毒の連翹・忍冬藤・生甘草、血の滞りをとる川芎・大黄・紅花を配合している。

(管理No.02-140)

 

治打撲一方 ちだぼくいっぽう

効能効果

打撲による腫れ、および痛み

配合生薬

川芎(センキュウ)、桜皮(オウヒ)あるいは樸樕(ボクソク)、川骨(センコツ)、桂皮(ケイヒ)、甘草(カンゾウ)、丁子(チョウジ)、大黄(ダイオウ)

出典

《勿誤薬室方函口訣》には「この方は能く打撲,筋骨疼痛を治す。(略)日久しきものは附子を加える(慢性化したものには附子を加える)」とある。

方意と構成

打撲、捻挫、骨折などの急性症状に適用し治癒を促進する効果がある。

血を巡らせる川骨・樸樕・川芎・大黄、陽気を通じる桂皮・丁子、および諸薬を調和する甘草からなる。経脈を温通し、血行不良を除き止痛する。

(管理No.02-141)

 

知柏地黄丸 ちばくじおうがん

効能効果

顔や四肢のほてり、排尿困難、頻尿、むくみ

配合生薬

地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンピ)、知母(チモ)、黄柏(オウバク)

出典

《医方考》に「腎労(腎気の消耗によって起こる疲労),背仰ぎ難く,小便不利する者,有余瀝(尿がしたたり),嚢湿り(陰嚢湿疹があり),小腹裏急(下腹部がひきつれ),便赤黄なる者(血便があるもの),六味地黄丸加黄柏知母,之を主る」とある。

方意と構成

「六味地黄丸」に知母と黄柏を加えたもので、虚熱症状(陰血が不足したために生じた熱)が盛んなものに用いる。

(管理No.02-142)

 

中黄膏 ちゅうおうこう

効能効果

急性化膿性皮膚疾患(はれもの)の初期、打ちみ、ねんざ

配合生薬

ゴマ油、蜜蝋、鬱金、黄柏

出典

《勿誤薬室方函口訣》には「諸熱毒,腫痛を治す(もろもろの熱毒証で腫れて痛むものを治す)。膿の有無を問わず,新旧を論ぜず(膿の有無や新しいもの古いものに関わらず),毒を散らし熱を解く」とある。

方意と出典

黄連解毒湯を軟膏にしたようなもので、熱性の皮膚疾患や化膿、打ちみ、捻挫などに、熱を去り、膿をとり、疼痛を緩解し、出血を止め、鬱血を散らす効能がある。

(管理No.02-156)

 

中建中湯 ちゅうけんちゅうとう

効能効果

慢性胃腸炎、下痢、便秘

配合生薬

桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)、山椒(サンショウ)、乾姜(カンキョウ)、人参(ニンジン)、膠飴(コウイ)

出典

小建中湯は《傷寒論》と《金匱要略》、大建中湯は《金匱要略》を出典としている。

方意と構成

「小建中湯」と「大建中湯」を合方したもので、両証の中間型に用いる。

(管理No.02-143)

 

調胃承気湯 ちょういじょうきとう

効能効果

便秘

配合生薬

大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)、甘草(カンゾウ)

出典

《傷寒論》太陽病中篇に「汗を発して後,悪寒するは虚するがゆえなり(発汗した後悪寒がするのは虚したためである)。悪寒せず,ただ熱するは実するなり(悪寒せずただ熱があるのは実したためである)。当に胃気を和すべし(熱を取り去り胃気を整えるべきである)。調胃承気湯を与う」とある。

方意と構成

一種の緩下剤で、胃の機能を調整する効果がある。「大承気湯」の枳実、厚朴の代わりに甘草を用いた処方である。大・小承気湯を用いるほどではないが、腹部が充実して便秘の傾向がある場合に使用する。

(管理No.02-144)

 

釣藤散 ちょうとうさん

効能効果

慢性頭痛、神経症、高血圧の傾向のあるもの

配合生薬

釣藤鈎(チョウトウコウ)、橘皮(キッピ)あるいは陳皮(チンピ)、菊花(キクカ)、防風(ボウフウ)、半夏(ハンゲ)、麦門冬(バクモンドウ)、茯苓(ブクリョウ)、人参(ニンジン)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)、石膏(セッコウ)

出典

南宋の《類証普済本事方》に出る。《梧竹楼方函口訣》には「肝厥の頭痛(肝気の亢進による頭痛),頭暈(めまい)を治す。その症,左のこめかみから眼尻にかけて痛むものによくきく」とある。

方意と構成

気の上衝(上に上昇してつきあげる症状)があり、頭痛、眩暈、肩こり、肩背拘急(肩や背中のひきつり)、眼球結膜の充血などに用いる。

肝の陽気を抑える釣藤鈎・菊花・防風、脾胃(胃腸)を丈夫にして痰をとる陳皮・半夏・人参・茯苓・甘草、のぼせ・胸中の熱感など上焦の熱をとる石膏、精神安定に働く茯苓・麦門冬が配合されている。

(管理No.02-145)

 

猪苓湯 ちょれいとう

効能効果

排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿、むくみ

配合生薬

猪苓(チョレイ)、茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)、滑石(カッセキ)、阿膠(アキョウ)

出典

《傷寒論》に「陽明病(邪気が体内へと入り闘いが盛んで炎症が強い状態)で脈が浮緊,咽が乾き口が苦く,腹が張って喘し(呼吸が苦しく),発熱して汗が出て,悪寒せずに反って悪熱し,身が重く感じられる。(中略)もし脈が浮で発熱し,水を飲みたがり,尿利が減少するのは,猪苓湯が主治する」とある。

方意と構成

本方中の薬物はすべて利尿の効果がある他、尿路の消炎作用があると考えられ、泌尿器疾患に応用される代表的な処方である。

「五苓散」の桂枝と朮の代わりに、水湿と熱を除き排尿トラブルを解消する滑石と、血尿を抑え体液を養う阿膠を入れたものである。

(管理No.02-146)

 

猪苓湯合四物湯 ちょれいとうごうしもつとう

効能効果

排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿、むくみ

配合生薬

猪苓(チョレイ)、茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)、滑石(カッセキ)、阿膠(アキョウ)、当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、地黄(ジオウ)、川芎(センキュウ)

出典

《勿誤薬室方函口訣》に「猪苓湯合四物湯,血淋(尿道病で尿に血が混じり、尿が渋って痛みが甚だしい状態)を治す」とある。

方意と構成

「猪苓湯」の適応症が遷延して血虚(血の不足)が生じた場合や、血虚体質の水熱互結(水湿と炎症が結びついたもの)・血淋に使用する。

(管理No.02-155)

 

通導散 つうどうさん

効能効果

月経不順、月経痛、更年期障害、腹痛、便秘、打ちみ(打撲)、高血圧の随伴症状(頭痛・めまい・肩こり)

配合生薬

当帰(トウキ)、大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)、枳実(キジツ)、厚朴(コウボク)、陳皮(チンピ)、木通(モクツウ)、紅花(コウカ)、甘草(カンゾウ)、蘇木(ソボク)

出典

《万病回春》の巻八・折傷門に出ている。

「跌撲(打撲)傷損きわめて重く,大小便通ぜず,すなわち瘀血散ぜず、肚腹膨張し,心腹を上り攻め(心下部が突き上げられ),悶乱して死に至らんとするものを治す(苦しみ悶え死に至るものを治す)。先づこの薬を服し,死血,瘀血を打ち下し,然して後に方に補損薬を服すべし(まずこの薬を服用し、瘀血を取り除いてから補剤を飲むべし)」とある。

方意と構成

打撲に限らず内科的疾患、とくに婦人科疾患に多く用いられるようになっている。

陽明腑実証(熱邪が腸胃にこもりつよい便秘がある状態)に使用される「大承気湯」に、血を巡らせる当帰・紅花・蘇木、経絡を通じる木通、気を巡らせる陳皮、諸薬の調和をする甘草を加えている。熱証があり便秘がつよい気滞血瘀(気が滞り血行不良がある状態)に広く用いられる。

(管理No.02-147)

 

桃核承気湯 とうかくじょうきとう

効能効果

月経不順、月経困難、常習便秘、高血圧症、更年期の神経症

配合生薬

桃仁(トウニン)、桂皮(ケイヒ)、大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)、甘草(カンゾウ)

出典

《傷寒論》に「太陽病(病邪が体表や体の上部を侵す病で、項がこわばり脈が浮き、頭痛,悪寒がするもの)解せず,熱膀胱に結び(太陽病が治らず下焦に熱が移り),その人狂のごとく(狂燥状態になり),血自づから下る,下るものは癒ゆ(自然と下血するならば自ずと治る)。その外解せざるもの尚未だ攻むべからず(体表の病がまだ治っていないものはまだ治療してはいけない)。まさに先ずその外を解すべし(まず体表の病を治すべし)。外解し終わって,ただ少腹急結するものは,すなわちこれを攻むべし。桃核承気湯に宜し(体表の病を治してなお、下腹部に硬結や圧痛がするものはこの方で治すべし)」とある。

方意と構成

下腹部に硬結を触知し、便秘や上衝(気の上昇によるのぼせ・頭痛・緊張・煩熱)のあるものに用いる。

主薬が桃仁と大黄で、瘀熱(血の停滞と熱)を除く。桂枝は血脈を通じて桃仁を助け、芒硝は大黄の通便による瀉熱(熱の過剰な状態の改善)を補助する。炙甘草は脾胃(胃腸)を守るとともに他薬の激しい薬性を緩和する。

(管理No.02-148)

 

当帰飲子 とうきいんし

効能効果

慢性湿疹、かゆみ

配合生薬

当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、川芎(センキュウ)、防風(ボウフウ)、地黄(ジオウ)、荊芥(ケイガイ)、黄耆(オウギ)、甘草(カンゾウ)、蒺藜子(シツリシ)、何首烏(カシュウ)

出典

《厳氏済生方》巻6瘡疥論治

「心血凝滞して,風熱を内蘊し(風熱が体内にこもり),発して皮膚に現れ(その熱が皮膚に発して現れ),遍身瘡疥のもの(全身が痒いもの)を治す」とある。

方意と構成

血虚(血の不足)により皮膚が乾燥し、分泌物が少なく、痒みを主訴とするものに用いる。湿疹・蕁麻疹・老人の皮膚掻痒症・皮膚炎に使用される。

本方は血を養う「四物湯」に、湿疹や痒みを抑える荊芥・蒺藜子、皮膚の気血を養う黄耆・何首烏を加えている。

(管理No.02-149)

 

当帰四逆加呉茱萸生姜湯 とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう

効能効果

しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛

配合生薬

当帰(トウキ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、木通(モクツウ)、細辛(サイシン)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)、呉茱萸(ゴシュユ)、生姜(ショウキョウ)

出典

《傷寒論》に「手足厥寒し(手足が冷たくて),脈細にして絶えんと欲する(脈が絶えそうに細いもの)は,当帰四逆湯がこれを主治する。このときにその人内に久寒(慢性化した冷え)あるものは,当帰四逆加呉茱萸生姜湯に宜し」とある。

方意と構成

寒冷刺激により体表に血行障害を起こし、神経痛・坐骨神経痛・腰痛・背痛・頭痛・四肢の痛み・凍瘡などを起こすものに用いる。

血を養い温めて経絡を通じる「当帰四逆湯」に、温性をつよくし、水をさばいて嘔吐を鎮める呉茱萸・生姜を加えたものである。

(管理No.02-150)

 

当帰四逆湯 とうきしぎゃくとう

効能効果

しもやけ、下腹部痛、腰痛、下痢、月経痛、冷え性

配合生薬

当帰(トウキ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、木通(モクツウ)、細辛(サイシン)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)

出典

《傷寒論》厥陰病篇に「手足厥寒し(手足が冷たくて),脈細にして絶えんと欲する(脈が絶えそうに細いもの)は,当帰四逆湯がこれを主治する」とある。

方意と構成

経絡を温めて冷えを散らすと同時に、血を養い滞りなく循行させる。

風寒表虚証(体力が低下している人で風寒の邪が体表に侵入するもの)に用いられる「桂枝湯」から生姜を抜いて、血を養い巡らせる当帰、温めて経絡を通じる細辛・木通を加えたものである。

(管理No.02-151)

 

当帰芍薬散 とうきしゃくやくさん

効能効果

冷え性、頭痛、めまい、月経不順、婦人更年期障害

配合生薬

当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)、川芎(センキュウ)、白朮(ビャクジュツ)

出典

《金匱要略》に「婦人懐娠(妊娠している婦人が),腹中㽲痛するは(お腹がしくしく痛むのは),当帰芍薬散これを主る」,「婦人腹中諸疾痛(婦人が訴える腹中の痛みには),当帰芍薬散これを主る」とある。

方意と構成

血の不足により瘀血(血行不良)が生じているもので、水毒(余分な水の停滞)があるものに用いる。

肝血を補い巡らせる当帰・芍薬・川芎が肝の調整に働く。脾胃の運化機能(胃腸の働き)を高める白朮・茯苓、水分代謝をあげる沢瀉により水湿の停滞を除く。

(管理No.02-152)

 

当帰芍薬散加附子 とうきしゃくやくさんかぶし

効能効果

冷え性、頭痛、めまい、月経不順、婦人更年期障害

配合生薬

当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、川芎(センキュウ)、白朮(ビャクジュツ)、沢瀉(タクシャ)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、炮附子(ホウブシ)

出典

《類聚方広義》に「妊娠,産後にして,下利(下痢)腹痛し,小便不利,腰脚麻痺し力無く(下半身に力が入らず),あるいは眼目赤痛のもの(目が赤く痛みがあるもの),もしくは下利止まず,悪寒するものは附子を加う」とある。

方意と構成

「当帰芍薬散」に炮附子を加えたものである。当帰芍薬散の証で、寒証が特につよく、冷え・関節や下腹部の痛みがあるときに用いる。

(管理No.02-157)

 

当帰芍薬散黄耆釣藤 とうきしゃくやくさんかおうぎちょうとう

効能効果

高血圧の随伴症状(のぼせ・肩こり・耳鳴り・頭重)

配合生薬

当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)、川芎(センキュウ)、白朮(ビャクジュツ)、黄耆(オウギ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)

出典

《金匱要略》に当帰芍薬散の記載がある。

方意と構成

老化や慢性病などで陰血(体液と血)が消耗し、肝の陽気の上昇により頭のふらつき・めまい感・筋肉のひきつりなどの症候が出るものに用いる。

「当帰芍薬散」に、“補気生血(気を補い血を生む)”の黄耆と、“平肝熄風(肝の陽気を抑え内風を取り去る)”の釣藤鈎を加えたものである。七物降下湯より冷えがつよく、胃腸の弱いものに使用される。

(管理No.02-158)

 

当帰建中湯 とうきけんちゅうとう

効能効果

月経痛、月経困難症、月経不順、腹痛、下腹部痛、痔、脱肛の痛み

配合生薬

当帰(トウキ)、桂皮(ケイヒ)、大棗(タイソウ)、芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)

出典

《金匱要略》巻下・婦人産後病脉證并治第21

「婦人産後に虚羸不足し(産後体が細く痩せてしまい),腹中刺痛やまず(刺すような腹痛が止まらず),吸吸と少気し(浅い呼吸しかできない),あるいは小腹中の急摩痛(下腹部がひきつれる痛みがあって),腰背に引くを苦しみ,食飲する能わざるを治す(腰や背中に響いて苦しく飲食できないものを治す)」とある。

方意と構成

中焦(胃腸)を温めて痛みをとる「桂枝加芍薬湯」に、血を養い血行を良くする当帰を足したものである。虚弱がひどい場合は膠飴も加える。産後にこだわることなく、男女ともに血虚が明らかであれば本方を用いて良い。

(管理No.02-159)

 

定悸飲 ていきいん

効能効果

動悸、不安神経症

配合生薬

李根皮(リコンピ)、甘草(カンゾウ)、茯苓(ブクリョウ)、牡蠣(ボレイ)、桂皮(ケイヒ)、白朮(ビャクジュツ)あるいは蒼朮(ソウジュツ)、呉茱萸(ゴシュユ)

出典

《勿誤薬室方函口訣》に「奔豚気を治す(臍下の動悸が発作的に突き上げ、激しい心悸亢進が起こるものを治す)」とある。

方意と構成

奔豚とは、気が下腹部から心下に突き上げ、動悸して呼吸が止まりそうになるほど激しい状態を指しており、動悸・頭痛・のぼせ・熱感・焦燥などの症状が現れる。本方は神経性心悸亢進症、ヒステリ―球によく使用される。

水毒(余分な水の停滞)と気逆(気の上逆)に用いる「苓桂朮甘湯」に、上衝した気を降ろす李根皮、脾胃(胃腸)を温め水毒を除く呉茱萸、精神安定に働く牡蠣を加えたものである。

(管理No.02-160)

 

独活葛根湯 どっかつかっこんとう

効能効果

四十肩、五十肩、寝ちがえ、肩こり

配合生薬

葛根(カッコン)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、麻黄(マオウ)、独活(ドッカツ)、生姜(ショウキョウ)、地黄(ジオウ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)

出典

《外大秘要方》に「柔中風(気血が不足しているために体に風邪が入りこみ、四肢がうまく動かせず筋肉がひきつれて仰向けになることができないもの),身体疼痛,四肢緩弱,不随せんと欲するを癒す。産後の柔中風,またこの方を用いる」とある。

方意と構成

発汗して風寒邪(風邪と寒邪が合わさった病邪)を散らす「葛根湯」に、風湿邪(風邪と湿邪が合わさった病邪)を取り去り温めて痛みをとる独活、血を養いこわばりや痛みをとる地黄を加えたものである。

(管理No.02-219)