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日本中医学会 第5回学術総会
 2015年9月12日(土)・13日(日) 会場:タワーホール船堀

chuuigakkai2015

『両側卵管閉塞、体外受精で妊娠に至らず、 漢方薬によって自然妊娠した症例』

楊 晶  井上 桜

【緒言】

女性の社会進出に伴い晩婚化がすすみ、妊娠に対して不安を抱える女性が増えている。 近年、不妊治療について気軽に相談できる場所として漢方専門薬局が注目されている。病院で両側卵管閉塞と診断されたケースでは、体外受精など高度生殖医療を主体に治療することが一般的である。しかし、患者の中には体調や事情などにより他の治療法を希望するケースもある。今回、中医学の弁証論治に基づく漢方薬が両側卵管閉塞に対して有効であった症例を経験したので報告する。

本症例は33歳、女性、受診の5年前に右卵巣膿腫で右卵巣を摘出。二ヶ所の病院にて卵管造影を行ない、両側卵管閉塞と診断され、自然妊娠を断念。高度生殖医療が必要と思われる状況のため、体外受精を2回受けたが妊娠できず、心身ともに疲れ、体質改善のため薬局に来店された。 中医学の問診・舌診の結果、33歳という年齢にも関わらず「腎虚」が進んだ状態と判断した。さらに不妊治療の不安がストレスを与えた。そのため、中医学の「補腎」と「健脾」を重点的に行いながら、ストレスを緩和する「疏肝理気」と骨盤内の血流改善目的で「理気活血」の微調整も行った 。

漢方薬の服用により、自覚症状として下腹部が温かくなり、軟便も改善、排卵期には帯下の量が増えた。また、月経前緊張症による頭痛、イライラ、胸の張りなどの諸症状も改善。日常仕事のストレスや不妊治療の不安な気持ちが緩和された。BBTが安定し、短い高温期が高く長く改善。本人も体質改善を実感。約3カ月目に自然妊娠した 。妊娠中も漢方薬を継続し無事に男児を出産。産後の回復も早く、母乳も良く出ており、体調も安定している。

【考察】

漢方薬で「補腎、健脾、疏肝」を行うことで自身の女性ホルモンの分泌が安定したと考えられる。基礎体温から高温期を維持できるようになった事を踏まえると、プロゲステロンの分泌が改善された可能性がある。また、両側卵管閉塞の状態を考慮すると、理気活血薬の併用により骨盤内の血流が改善、閉塞部分が改善された可能性が考えられる。漢方不妊治療において、補腎と健脾を同時に行うことは、「先天の精」と「後天の精」を同時に補い、臓腑の「気血精」を充実させることにつながる。臓腑の「気血精」が充実することにより、弱まった生殖器の潜在能力を高め、さらに理気活血薬を併用することで骨盤内の血流が改善、卵巣の働きが高まった可能性がある。わずか1症例であるため、今後の諸家の臨床報告や医学的な検証を待ちたい。



『漢方薬による疣贅(ゆうぜい)治療症例報告』

王全新  西野 星彦

【緒言】

疣贅(ゆうぜい)は、いわゆる「いぼ」の事を指します。難治性で繰り返しやすいという特徴があります。 本症例は:27歳の女性。26年11月13日初診。 病歴:中学生から出ていたが去年に悪化した。 足の親指側先に米粒大の疣贅がどんどん大きくなり、数も増えてきて治療しても治らない。手の親指にも出てきた。皮膚科での窒素凍結治療を行った、並行に薏苡仁を飲んだが治らず繰り返していた。随伴症状としては冷え性(手足)、生理痛、倦怠感、嗜眠が強いなど。 ①1年以上HPで液体窒素凍結治療、月に2~3回治療したがなかなか治らない。 ②痛みがあり、足にも出来ていて靴が履きにくい等生活に支障がでており患者のQOLの低下を招いている。

【方法】

弁証論治

  • 弁証:本虚標実
  • 本虚:肺脾気虚
  • 標実:邪毒阻絡 気血瘀阻
  • 治則:先に標治 活血化瘀 解毒通絡
  • 次に本治 補気健脾 利湿化痰
  • 処方:先に標治:
  • 桂枝茯苓丸加薏苡仁加減
  • 桂枝茯苓丸加薏苡仁に薏苡仁20g 夏枯草5g 板藍根5g加えて服用。
  • 次に本治
  • 補中益気湯加減

【結果】

1ヶ月後手指と足の疣贅の改善が見られた、生理痛も緩和された。その後も手の湿疹や乾燥治療、体質改善治療を続けている。今まで再発なし。

【考察】

今回の症例では以下の三点が考察する。 ①弁証論治の重要性・・・利湿の働きのハトムギ錠のみ使用しても全く変化が見られなかった。疣といっても、原因が変わると治療方法も異なるので正しい弁証論治が大事であると考える。 ②治療に痛みを伴わない+短期間・・・液体窒素療法のデメリットとして 複数回治療を続ける必要があるが、痛みが伴うため治療途中で断念してしまうケースが少なくない。 ③再発しにくい・・・弁証論治により体質を改善して体の正気をUPして邪気が体に侵入し難くなり、再発もしなくなると考えられる 漢方での治療では痛みを伴わず、治療期間も短期間で改善が可能と再発しにくいと考えられる。漢方治療で改善されたことにより、患者のQOLを高め、正しい弁証論治で邪気を取り除いて正気を扶助することにより患者さんの体質を改善して根治の道筋となりえると考えられる。



『高齢者の糖尿病治療における漢方薬の可能性』

早川友樹

【緒言】

高齢者でも高血糖の是正には血糖降下薬が有効であるが、高齢者では一般的に腎機能の低下などの薬物排泄遅延により、血糖降下薬での低血糖が問題になることが多い。薬剤の選択、投与、経過観察には慎重を要する。 今回は漢方薬を用いて高血糖による諸症状の改善とともに、低血糖などの副作用なく血糖値の顕著な低下が見られた実例を報告する。

【症例】

80歳,女性

  • 主訴:2年来の口渇、多飲、多尿、ふらつき、足の無力感
  • 現病歴:13年前,HbA1c=12~13になり教育入院。同時に西洋薬での治療開始。1年半前より倦怠感などの低血糖様症状のため自己判断で休薬。
  • 当時のHbA1c=6.7。その前後、徐々に症状が出現。2015年4月9日に初来局。
  • 随伴症状:眼瞼下垂、食後嗜眠、高体温、手足のほてり、便秘傾向、掻痒感、体重62kg(2年前から-11kg)。空腹時血糖283mg/dL 舌やや紅、裂紋、胖大、無苔
  • 既往歴:結石による機能不全により右腎摘出。卵巣嚢腫により片卵巣摘出。

【治療】

  • 弁証:陰虚火旺、腎気不固
  • 治則:滋陰降火、益気固腎
  • 処方:滋陰降火湯、補中益気湯、六味地黄丸

【結果】

開始約2週間後、ふらつき・無力感・尿頻度・顔の紅みが減少。尿の切迫感・皮膚掻痒感が消失。1ヶ月半後、便通がよくなった。1日排尿数は8~9回、尿量も減少。倦怠感、無力感がさらに減少。ふらつき、口渇が消失。肌は潤ってきた。その後当初の症状はほぼ消失し、食後に少し倦怠感が出る程度に落ち着いている。

起床時(空腹時)自己測定血糖の平均値の推移
初来局の翌日(4月10日)を1日目として起算した。

  • 1週目288mg/dL、2週目237mg/dL、3週目230mg/dL、4週目219mg/dL、
  • 5週目208mg/dL、6週目189mg/dL、7週目178mg/dL、8週目171mg/dL
  • 最高値371mg/dL(4日目)、最低値148mg/dL(54日目)

【考察】

弁証論治に基づき正しく漢方薬を組み合わせることで諸症状の改善だけでなく、血糖値の改善も確認することができた。高齢者の糖尿病では漢方薬での血糖コントロールも有用な選択肢の一つになることを示唆している。



2015年 第5回中医学会報告レポートより


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